ちょっと前ですが、森さんの「仕事の価値を高める「デザイン」と「クリエイティブ」」が面白かったです。
クリエイティブ・クラス
引用されている「クリエイティブ・クラス」は、リチャード・フロリダ氏の本で最近、注目されている概念です。HBRのページから引用すると(ピンクはダニエル・ピンクね)、
ピンクの考えるところでクリエイティブ・クラスを定義すると、「左脳思考だけでなく、右脳思考もできる人」であり、「何らかの専門性を持ちながらも、そこに埋没することなく全体観を俯瞰でき」、かつ「論理的でありながらも、美しさや遊びといった、論理では説明し切れない世界を理解できる人」ということになりましょうか。
という感じ。よく言われる理想的人材像の現代版でしょうか。そして、
ただ持っているだけでは無意味ですから、組織的に活用できる能力が必要です。
だと。そのためにダイバーシティ・マネージメントが重要になるわけですね。
デザイン
さて、一方で、森さんがもう1つ出しているキーワードが「デザイン」。デザインという言葉は、僕なりにいえば"いかに使ってもらうか"、"いかに続けてもらえるのか"、そして、"いかに作るか"という3段階を俯瞰しているものです。
森さんのエントリを引用すると、"いかに使ってもらうか"、"いかに続けてもらえるのか"というのが以下の内容です。
auのDesign Projectにおける「デザイン」とは、ケータイ端末の形態を決定することだと理解している人は多い。だが、Design Projectのサイトに書かれたテキストを読み込むとわかるように、auのコンセプターとデザイナーたちは「カタチ」を決めているだけではなく、ユーザーの「経験」を作ろうとしていることがわかる。最近では、モノとしての形を決めていくだけではなく、最終的な製品のでき上がりや売れ具合、あるいはその購入後のパフォーマンスまでを含んだ「デザイン」に注目が移っている。
こうした視点を持った上で"いかに作るか"にフォーカスする必要性があります。
ビジネスサイドとの議論からアーキテクチャ指針を決める
現状のプロジェクトで、僕が何をやっているのかといえばビジネスモデル・営業戦略(値付け、マーケティング)といった視点と、アーキテクチャの特徴・拡張性の担保といった視点をリンクするようにソフトウェア・サービスを"デザイン"することです。
僕がデザインしているのはアプリケーションの仕様に過ぎないわけですが、それを導き出すまでにやるべきことはアプリケーションでもソフトウェア技術でもありません。
それはビジネスそのものを理解することであり、かつ、テクノロジーがもたらしうるビジネス的な可能性を提示することです。
価格設定を考えてみましょう。ビジネスサイドから見て、どんなパラメタで価格を調整したいのか(あるいはしたくないのか)という視点は、アプリケーション・アーキテクチャとリンクされています。逆に、アプリケーションでは、こうしたパラメタ設定に意味がないといった意見も出しています。
例えばデータの件数で価格が変わるといわれてもアプリケーション上は「データの容量×件数の総和」という扱いになります。しかもデータ容量見積もりしても、テラバイトの時代となってはたいした数字にもならなそう。であれば、データ件数に関わらない一律価格、少なくとも100個単位という価格設定が可能ということになります。
データ件数による価格設定が市場の常識であれば、この軸での競争を無意味化することができます。競合相手は1個単位での価格設定を行っているでしょうが手放さざるを得なくなります。その時に、こらちが違う基準で価格調整力を持っていれば、競争を優位にすることができるわけです。
こうした発想はビジネスサイドから出ることは少ないです。なぜなら常識に捉われているからであり、ソフトウェアの可能性を知らないからです。これは悪いことではありません。むしろ当たり前のことでしょう。であればこそ、ソフトウェアサイドのデザイナーがこうした視点を提示することに意味が出てきます。
アーキテクチャは探し出すもの
ここまでくればアーキテクチャの指針が見えてきます。あとは、その指針に従い最適なアーキテクチャを"探し出す"わけです。探すというのが適切でしょう。指針が見えれば、僕がすることはGoogleで検索をして、その指針に似たアプリケーションがどんなアーキテクチャで実装しているのが見ることなのです。アプリケーションの説明を読み、試してみて、OSSなら内部構造をみて、そこから多くを学ぶことができます。
もちろん過去から積み上げた経験も活かされるわけですが、これとて探すという感覚に近い。なにかを発明したり、発見するというよりも情報を組み合わせているという感覚です。
自由な発想が境界線を無意味化していく
森さんはデザインに対して、
デザインという何らかの目的を達成するために必要な資源を柔軟に組み合わせる発想が、結果的に業界固有の壁を壊し、境界線を無意味化していくことになっている
と言われています。まさに。
デザインする対象はただのモノかもしれません。でも、モノの形態や構造を決定するのはモノ自身ではありません。そのモノにかかってくる外圧を見極め、内圧としてバランスをとることがデザインという仕事だと思っています。現状のビジネスサイドには、まだまだソフトウェアの面白さが伝わっていません。僕らにできることは、まだまだたくさんあるということです。
