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情報を変換して増幅する

 触覚コンタクトレンズというのをご存じでしょうか。名古屋工業大学で開発されたもので、つけるだけで触覚が鋭くなるというものです。触覚コンタクトレンズは厚さ0.3ミリのシートに、直径1ミリ長さ4.2ミリの突起が生えているだけ。電気的な仕掛けでもなんでもありません。この下の写真のやつを、指あるいは手で押さえつけて物体の表面をなぞるだけ。


名古屋工業大学 トヨタ自動車株式会社寄附講座 『技と感性の力学的触覚テクノロジー講座』


2004年度 グッドデザイン賞「触覚コンタクトレンズ」


 この研究はトヨタ自動車が寄付した講座がきっかけになっています。自動車のボディ外板の面品質検査では職人が触って歪みや凸凹を確かめるのですが、”軍手をしている方がよく分かる"という現象があったのです。しかも、特定の編み方をした軍手を、特定の方向に動かしたときだけ。


 秘密はメリヤス編みにありました。メリヤス編みの軍手じゃないとダメ。ニットの基本的な編み方なので皆さんも目にしたことはあると思います。メリヤス編みには表と裏があり、かつ方向性があります。



photo by Breibeest



photo by Breibeest

 この表と裏では構造上、表よりも裏の方が伸縮性が高くなっています。この時期にニットを着ている人はいないと思いますが、引っ張り出して確認してもらうとわかると思います。メリヤス編みのマフラーとか、くるんっと巻いてしまうのですが、この構造が理由です。


 さて、このメリヤス編みの軍手をはめてボディ表面をなぞると、表面の凹凸のわずかな上下(垂直方向の変化)を手が通過する瞬間に、軍手の裏側の繊維が水平方向に大きく動くことがわかりました。つまり、表面をなぞるために手を水平方向に動かしているとき、軍手が表の面におきた垂直方向の変化を、裏の手に触れている面では水平方向に増幅してくれていたのです。

 職人は、凸凹を、"まさに凸凹の垂直変化"として感じていたわけではなくて、水平方向に増幅される動きを感じで歪みを見つけていたことになります。

 触覚コンタクトレンズは、この原理を応用して開発されたものです。詳しくは、ここら辺のレポートに。
触覚コンタクトレンズ効果の周波数領域解析(PDF)
触の技と数理(PDF)


 で、何が面白いかというと、このような「情報の変換による増幅」という考え方が、これからのソフトウェアで非常に重要なテーマであるから。個別には気づかないぐらい小さな変化でも、その情報を変換して違う意味で増幅することで情報に価値が出てくる。触覚コンタクトレンズ的なソフトウェアを作れると非常に面白い。

 2.0は小さな情報でも十分な量を集積すると方向性が見える、というものでした。だから、ソーシャルな方向に注目されており、企業ではマーケティング分野で有望視されています。しかし、企業内システムに限ってみると、"十分な量を集積する"というのがとても難しい。ワールドワイドな企業じゃないと使えない。

 というわけで、多くの企業では「小さな変化を変換して増幅する」というテーマの方が重要だと思っています。アーキテクチャ的にはメッセージ/イベント駆動でしょう。あとはマルチメディア(画像、動画など)の活用、AR(拡張現実)などのモバイル端末によるリアルタイム/プレイスな情報付加。

 まぁ、いろいろと楽しそう、ということで。

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2009年05月21日 15:30に投稿されたエントリーのページです。

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