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持続可能な社会インフラとしてのIT

 遅ればせながら2010年初エントリです。Twitterもですが、年末年始と書き物が多くて、すっかり吸い取られてしまいました。そんな感じですが、本年もよろしくお願いいたします。

 さて年末から年明けにかけて、いわゆるゼロ年代論(2000年から2009年の総括)と"これからの10年"についての議論が活発になっているようです。ゼロ年代は目の前のことに必死だったように思いますが、これからの10年は変化をじっくりと感じる時期になる気がします。それとともにITが変化を迎えるべき10年ともいえるでしょう。


 先日、"場の理論"で有名な東京大学名誉教授の清水博先生にお会いする機会がありました。その中でITについていくつかの話をさせて頂きました。

 清水先生に会うキッカケはデブサミ2010と併設されるPM Conference 2010(有料)です。基調講演にお招きするのですが、それを知って主催者側に連絡したところ、事前の打ち合わせに参加させていただく事が出来ました。以前から本などを通じて存じ上げていたので非常にうれしい出会いでした。

 "場の理論"の細かい説明は省きますが、"場"という現象によって生命や社会や組織を捉えなおす考え方です(哲学と言うほうがいいかな)。清水先生は78歳、野中郁次郎や松岡正剛が影響を受けたといえば凄さが伝わるでしょうか(松岡正剛によるすばらしいレビュー)。


 "場"は"形”です。それぞれの現場に最適な"場"がある。そのため"場の理論"は"場"を作り上げるための"型"として機能します。良い"場"に必要なものは、1.全体性、2.関係性、3.ドラマ性の3つ(以下の説明には僕の解釈が含まれるのが、正しくは後述の原典を見てくださいね)。

 全体性ですが、場というのは"境界"を持つ1つの塊として認識されなくてはいけません。ただし、その境界は"里山"的、つまり里山が部落と自然の緩衝地帯として機能するように、内と外を緩やかに分離し、かつ繋げるものです。先生は即興劇に喩えますが、そこにおける観客と役者のような関係。舞台は全体性を持ちますが、観客とは緩やかに繋がっています。

 次が関係性。舞台の上にいる役者同士が個々の個性を残したまま、互いに関わり合い、関係を築き、それによって創出されてくるものがある。

 最後がドラマ性。劇は進みますが、その方向性をドラマとして表現する。ビジョンや理念に近いモノですが、より動的な表現としてドラマという言葉を使われています。

 この"場の理論"も時代と共に変化しています。現在、世界は資本主義や金融主義のグローバリズムが限界を迎え、持続可能な社会への大きな転換が起きています。

 清水先生はグローバル化によって全体が見通せなくなっており、"場"に全体性を見いだすことが難しくなっていると言われていました。だからこそ、より身近な"関係性"が重要であり、そこにITがやるべきことがあると。

 一方で、ノイズ工学という言葉で進みすぎたデジタル化の問題を指摘されています。あまりにクリアなモノは、人と物の"境界"をモノ側が規定してしまう。そうなってしまうと、"境界"の豊かさが失われて、人との関わり合いが苦しくなってしまう。ハイビジョンテレビとブラウン管、デジカメと銀塩写真、プラスチックの眼鏡とガラスの眼鏡。境界に良いノイズが含まれていることで、そこに関わる人が豊かさを見いだしうるのではないか。ITにも、デジタルの対称としてのアナログな感覚を取り入られれないものか。


 お話しさせて頂いたことをまとめると「豊かな関係性の創出に対してITにできることがある」ただし、「境界がクリアすぎては豊かさが失われる」ということになります。

 このテーマは、まさにこれからの10年でITが解いていくべきものでしょう。もはやインターネットなしで我々の生活が成り立ちません。新しい関係性の創出にITは大きな影響を与えましたが、それが豊かな関係であったかと言えば、それだけではなかったはずです。

 最近、Googleと中国政府が難しい関係にありますが、そこで行なわれている議論の本質は上記のようなことです。ビジネス上の観点からすれば中国市場を放棄するのはあり得ない。しかし、情報の民主主義を掲げるGoogleからすれば許されないことがあったわけです。もちろん、Googleにも商業主義的な側面は多分にありますが、それだけではないという姿勢が初志貫徹されればGoogleが真に持続可能な企業になりうるということなのかもしれません。

 社会に積極的に関わっていけないならITが産業として持続できることもないでしょう。ITが真に持続可能な社会インフラとして機能することができるのか。あえて比べれば電話や電車や電気と肩を並べうるかは、これからの10年で少しでも進むべきトピックスだと思います。


4121905032生命を捉えなおす―生きている状態とは何か (中公新書)
中央公論社 1990-10

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4130130218場の思想
東京大学出版会 2003-07

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2010年01月23日 15:00に投稿されたエントリーのページです。

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