懸田さんに誘われて(?)、産総研の江渡さんが書かれた「パターン、Wiki、XP ~時を超えた創造の原則 」のイベント「刊行記念トークセッション 「時を超えた創造の原則」」に行ってきました。
江渡さんから「なぜ、この本を書いたのか」という説明があったあと、イベントの後半は永和の角谷さんと懸田さんによるgenerative(生成的)なセッション。お二人がテンション上がりっぱなしで、ともかく楽しそうでした(永和の昼休みみたいだと言われていたのですが、どんだけハイレベルな昼休みなんだと)。サマリは、こちらとか、こちらにあります。
このイベントは非常に気づきを得られました。それは「パターンは、非定型な成果物を産み出すための、ある種の定型的な手法である」ということです。
非定型な成果物というのは、ソフトウェアプロジェクトやデザイン行為のように量産型ではない成果物のことです。毎回なんらかの目的のためにやるので、成果物も毎回異なります。しかし、成果物が異なるからといって、毎回違う"やり方"をしているのかというと、そう言うわけでもない。確かにスケジュールもメンバーもプロセスも違う。でも、そこには定型化された手法があります。だから、見積もりも出来る(参照:「良いデザイン」の工数は見積ることができるか)。
そういったパターンを使っていくことで成果物がgenerative(生成的)に生まれてきます。成果物の形ありきではありません。深めに書き始めると成果物の良さをしめす"無名の質"や、構造を保全しながらも成長する構造保存変換や全一性拡張変換といった概念があるのですが、長くなるので全部割愛。「パターン、Wiki、XP ~時を超えた創造の原則 」を読め!あと、アレグザンダーはたしなみ程度に、ぜひ。僕も角谷さんがオススメしていた「クリストファー・アレグザンダー―建築の新しいパラダイムを求めて」が入門にはいいと思います。
さてパターンといっても種類があると思っています。僕の中では教科書的パターン、メソッド的パターン、経験的パターンと呼んでいます。
まずは教科書的パターン。教科書的パターンは教科書的に明文化されており、業界では一般的に使われるというものです。ソフトウェアプロジェクトの場合だと、フレームワークやツールなどの道具立てや、デザインパターンやPofEAAなどの静的なデザインモデル、アジャイルのプラクティスやTDDなどの動的なプロセスモデルにあたります。
こうしたパターンは情報が多く形式化されているのが特徴です。業界では共通言語的に利用が可能で、ある程度の実施方法についても共有されています。
次はメソッド的パターン。メソッド的パターンは企業や事務所レベルでは共有されている手法で、漏れ聞こえてくるものの、外部の人には具体的な使い方がよく分からないものというやつです。最近、「デザイン・リサーチ・メソッド10」という本を買ったのですが、ここにはIDEOを初めとするデザイン事務所のリサーチメソッドが並んでいます。その中でアロイという事務所の人が、こう言っています。
「大丈夫。ほかの事務所に真似される心配はない。」これは「デザインリサーチのプロセスを公開されることに抵抗はないか?」という問いに対するガス氏の答えだ。その理由は、アロイがデザイナーの人材育成に力を入れてるためだと言う。たとえリサーチのプロセスだけを真似しても、リサーチするデザイナーが違えばアロイと同じ結果にならないと主張する。
IDEOなどは比較的手法が一般化しつつありますが、長々と形式化されているわけではありません。どちらかというと事務所の売りとして公開しているというところです。コンサルファームの"○○メソッド"というのも同じです。
最後は経験的パターン。経験的パターンは暗黙知であり、その本人しか使いこなせないようなものです。渡辺聡さんによると"ベクトル空間と多次元リアルオプション"で"本にもサイトにもならないし、そもそも記述できない"ものだそうですが、よく分かります。もはや渡辺さん個人にしか使えないパターンであり、渡辺さん個人のアウトプット。
上記のパターンは連続的で境目が曖昧です。例えばXPのプラクティスそのものは形式化されており教科書的と言えますが、実際にペアプロをどうやるのかという細かいノウハウは会社や個人によって蓄積されているのでメソッド的とも経験的とも言えます。t_wadaさんなんかは、もはや経験的パターンとしてTDDを実践されているのでしょう。
では、こうした3種のパターンを個人レベルでは、どう使えばいいのでしょうか。
まずは自分だけの経験パターンを蓄積することが大事です。そのためには教科書から学び、「巨人の肩に乗る」というのはとても大切。僕が感じたのは、
@papanda 巨人の肩に乗る(=他人の答えを知る)ことも大事だけど、そこから自分で頭を使うことも大事。答えは最終的には自分の中にしかないけど、その過程で自分以外に答えを求めることも必要なのさ。
ということです。我流を突き進むまえに、王道を学ばないと行けません。守破離ですね。
その上で、自分の経験的パターンを教科書的パターンにしていく作業も大事だと感じます。少なくも文字にする。そうやって自分の知識を外部化することで、自らの学びが深くなるからです。
例えば棚橋さんの「ひらめきを計画的に生み出す デザイン思考の仕事術」なんかは、棚橋さんの経験的パターンを"デザイン思考"という名前でパターン化して、なんとか教科書的にしようと努力されている成果物です。棚橋さんとは、
デザイン思考【design thinking】 デザイナーの感性と手法を用いて人びとのニーズと技術の力を取り持つこと
と定義されていますが、ここにおける手法が、僕が書いているパターンのことです。KJ法、人間中心設計などは形式化された教科書的パターンだし、エスノグラフィやプロトタイピング、シナリオといったところはメソッド的パターンとの境目に位置するでしょうか。ただ、これらを重ね合わせていくのは棚橋さんの経験的パターンだと思います。
こういった教科書手前の手法を学ぶにはワークショップなどで"体験的学ぶ"ことも大事です。というわけで、papandaさんと一緒に、8/1にデザイン思考の仕事術ワークショップをやりますので、こちらもよろしく。
棚橋さんのレベルはなかなか真似できないと思うので、ブログやtwitterからでもいいです。ともかく外部化することが大事。
それにしても、このエントリを書くのにtwitterやtumblrが役立ちました。そもそも懸田さんとtwitterしなければイベントにも参加しなかったわけですし。今後も、僕自身の動的な思考はtwitterやtumblrで公開しつつ、サマリ的には、このブログを使いたいと思っています。
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