人月というのは文字通り働いた時間に応じて請求が行われるというもの。ブルーカラー的な労働をしている限りは人月で働くことは正当なわけです。
「作らない」という視点
人月を超えるためには時間に関係なく圧倒的な成果を挙げる方法を見つけなくてはいけません。でも、圧倒的に生産性をあげるという視点ではだめ。生産性を上げているというのは、あるプロセスの作業効率をあげて時間を短くしているに過ぎないので時間給の罠からは逃げられない。ありがちな話として3ヶ月かかるAさんよりも、2人月でできるBさんのほうが実入りが少ない。
では、どうするかというと「作らない」という視点になる必要性があります。作らないというのどういうことかというと「作ったものをいかに使いまわせすか」か「いかに他人に作ってもらうか」ということです。
作ったものをいかに使いまわせすか=レバレッジを効かす
使いまわすというのはレバレッジ(てこ)を効かせられるかが最大の要素になります。もっとも一般的なのは社内標準フレームワークや社内共通ライブラリというものです。もちろん、これはレバレッジが効くのですが、よほどの巨大企業で、かつ案件管理が上手でないと不可能がというのが現状です。
では、どうするのか。現状で最も普及しており効果があるのがオープンソースソフトウェア(OSS)です。OSSとして成功するということは、それ自体がレバレッジが効く仕組みであるという証明になります。
OSSについて、いまだにネガティブな人がいますがコモンズは社会全体が成長するために重要な概念です。リーナスがウィキノミクスの中でうまい例えをしています。
「それはまるで、公共道路工事が私企業から仕事を奪っていると言うようなものだ」。主な輸送機関が公営になっていることは、私企業が利益を得る機会が減ることでもあるが、その損失を補って余りあるだけのメリットが経済全体に発生する。
つまりOSSを基本として上で何ができるのかに乗っかるほうが長期的な視点では非常にメリットが大きい。鉄道のレール幅が標準化されて以降、それまで自前で鉄道を引いた企業がことごとく倒産しました。コモディティ化は短期的には売上を圧迫しますが、それを前提にできれば利益の源泉になります。
これを実践しているのがIBMのLinuxです。IBMはLinuxに億ドル単位で投資を行っていますが、IBMのLinuxサーバやサポートサービスは年間で10億ドルを売り上げます。注目すべきなのはIBM独自のディストリビューションを作らない点です。Linuxはオープンスタンダードとして認知されており十分にコモディティ化されています。彼らはLinuxそのものに投資を行うことで利益を確保できると判断しているのです。
いかに他人に作ってもらうか=労働作業移転
次に他人に作ってもらうということ。これは労働作業の移転です。具体的にはATMがこれにあたります。ATMを利用しているユーザーの作業時間を考えると、ATMによって銀行側が膨大な経費削減を実現していることがわかります。
僕のイメージは羽生さんのマジカです。スタロジはマジカを前提としたビジネスを開始しましたが、よく考えられた仕組みだと思います。マジカが面白いのは「設計はユーザがやるんだよ」というATM的な戦略です。設計作業は非常にコストもかかるしリスクも高い。そこを外部化できてしまうことで「作らない」ことも実現できますし、ユーザがやることでリスク低減にも効果を発揮します。しかも、ユーザーはトータルコストを下げられてうれしい。スタロジのDIYページを見ると具体的な数字で説明がされています。売上が減るとか、そういう野暮なことは言ってはいけません。羽生さんはルールを変えようとしているのですから古い尺度で考えても批判にはなりません。
あとは1タスク8万円という目標額に向けて内部の生産性を効率化することにフォーカスができます。その次にはSIer向けにマジカをベースにしたOSSの開発フレームワークの提供を開始するのではないでしょうか。そうすれば、今度はOSSによる「作らない」世界を実現することができます。もちろん、このためには開発フレームワーク上でどう差別化し、どう儲けるのかという問題をクリアする必要性があります(だって8万円をいか安くするかという競争になってしまうので)。これについてもシステムのライフサイクルに注目すればいくつかの道がある気がします。
人月を超えるということ
人月を超えるためには何で儲けるかというのをきちんと考えないといけません。もっと正確に書ければ「みんなが得をする世界」を考えないといけない。作業をして報酬をもらうなんて「小学生のお駄賃」です。自分だけが儲かるということではなくて、もう少し広い目で考えてビジネスをしないと人月はなくならないでしょう。
