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複雑な世界、単純な法則

 複雑な世界、単純な法則 ネットワーク科学の最前線はワッツ&ストロガッツの「スモールワールド・ネットワーク」とバラバシの「スケールフリー・ネットワーク」をバランスよく紹介したもの。比較しながら書かれているので両方を理解するのにちょうど良いです。文章も分かりやすくてオススメです。

 それぞれを簡単に。スモールワールド・ネットワークは「6次の隔たり」で有名ですが、世界中の人が6人の友達を介して繋がっているというもの。規則的ネットワークに少数のランダムリンクを加えることで隔たりが急速に減ることを示しています。
 一方のスケールフリー・ネットワークは豊めるモノはさらに豊むという法則。スモールワールドと異なるのはハブとなる、「弱いけど数多くのリンクを持つモノ」につながるノード数が物理限界なく増えていく点。インターネットはその象徴です。

 この手の本を読むと自然が単純な法則に支配されている気になります。べき乗則にいたっては世界の根源的なルールではないかと思えるほど、どこにでも現れるものです。例えば河でセグメント(合流地点から次の合流地点まで)ごとの流域面積(そのセグメントが受け持つ排水量)をグラフ化するとべき乗則になります。あるいは、インターネットのリンク数による要素分布を行なっても同じことです。
 とはいえ単純なのは法則だけであって結果は非常に複雑です。複雑系と現実(含むソフトウェア開発)でエントリしましたがカオス的要素が発生するからです。


クラスター化された組織の強さと弱さ
 面白かったのはフラット化する世界(下)にも書かれていたバングラデッシュの銀行の話。この銀行は貧困層向けの融資をしていますが回収率は97%という高い値を保っています。この秘密は、

人々を互いに結びつけてクラスター化すること

 クラスターとはネットワーク内で強い絆で結ばれたカタマリをさします。そのクラスター同士が弱い絆で結ばれあうことによってスモールワールドが作られています。クラスター内では各要素は緊密な関係を保とうとします。

融資を受けたい人は、5人で構成される借入グループの一員になるのだ。この5人のグループ全体が、メンバーのだれかのローン返済に責任を負い、もしグループが債務不履行におちいったときは、グループのメンバーのだれ一人として新たな融資を受けることができない。

メンバー間の関係ははるかに強く、また主として、信頼、経験、共有の価値観を基礎として成り立っている。<中略>さらに重要なことに、メンバー間での自由で詳細な情報交換がおこなわれるので、メンバーの1人が債務不履行を回避してなんとか返済していくために思いついたうまい方策は、どんなものでも他のメンバーも利用できることになる。クラスター化された集団は密に編まれた構造になっているおかげで、個々の要素を加算した以上のものとなる。

 クラスター化された組織は非常に効率化され強い絆で結ばれたされているので高いパフォーマンスを維持します。その代わり、行き過ぎると外部の情報や斬新な考え方から隔絶されてしまい閉じこもってしまいます。こうした場合には外部に繋がる弱いリンクを重視する必要性もあります。

 良い組織ほど内に閉じこもってしまい、いつの間にか時代に取り残されてしまうのは、こうしたことからも説明ができます。一方で継続的に良好な組織が存在するのは、構造上の仕掛けとして外部との弱いリンクを持つようになっているからだと考える事ができます。外資系の優秀な企業がOB会を重視しているのは有名でしょう。本書ではシリコンバレーがエンジニアの転職が多いおかげでスモールワールドになっており、高度にクラスター化されているために成功したといった指摘もありました。

 フラット化する世界では、企業や国が合理的な経済関係を結ぶことによって世界が平和に保たれるという指摘を紹介しました(エントリ:フラット化する世界)。人は個人の欲望だけで行動するのではなくネットワークによって強い影響を受けているのです。エコシステム(生態系)という表現をしても良いでしょう。インターネットによってグローバル化されたネットワークが出現し、そこにお互いがクラスター化できるだけのインフラが作られたのです。ネットワーク理論の面白さを改めて感じることができました。


拡散律速凝集
 さて、もう1つだけ。拡散律速凝集(DLA Diffusion-Limited Aggregation)という数学ゲームがあるそうです。1つの分子が静止している状態からスタートし、そこに分子をいれてランダムに動かします。分子は静止している分子に触ると停止します。これだけを何千万回も繰り返と面白い形になります。Googleでイメージ検索すると出てきますね。分子がランダムにぶつかった結果、偶然にも長くなった腕はさらに多くの分子を絡め取るようになります。だから長い腕はさらに長くなるわけです。
 で、こいつをAppletで作ってやってみました。さすがに何千万回も繰り返せないので25000回。で、こんな感じ。うーん、いまいち育ちきらない(w。でも、面白いですね。

 

4794213859複雑な世界、単純な法則 ネットワーク科学の最前線
マーク・ブキャナン 阪本 芳久
草思社 2005-02-25

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2006年11月27日 02:00に投稿されたエントリーのページです。

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