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私的ITアーキテクト考:1.ITアーキテクトが作るもの

 連載を始めると書いたものの第1回までに時間がかかってしまいました(w。さて、第1回は、いきなり「ITアーキテクトが作るもの」からはじめようと思います。僕もこの質問に困っていましたが、最近ふと気づくことができました。それは、

ITアーキテクトは「そのシステムがある世界」を創っている

ということです。なんだそりゃ、と思われるかもしれませんが、もう少しだけ読んでみてください。


なぜそのアーキテクチャになったのか
 普通に考えればITアーキテクトが作っているのはアーキテクチャです。例えばシステムの設計思想や具体的なフレームワークの構成のようなものでしょう。もちろん、これ自体は誤りではありません。

 とても大事なことは「なぜそのアーキテクチャになったのか」という理由をきちんと説明できることです。これがなくてはアーキテクチャを作ったとはいえないのです。

 特にエンタープライズ・システムでは、一度作ってしまうと修正はできても、壊せるようなものではありません。存在期間は短くても3年、長かれば10年以上。かかったお金は数千万、いや数百億、数千億ということもあるでしょう。初期構築だけではなくて運用にかかるお金もいれればもっとかもしれません。

 システムを作ると、そこには非常に大きな「未来に対する責任」が発生するのです。

 そんなシステムを「なんとなく作った」というわけにはいきません。「なぜ、そのシステムなのか」「なぜ、そのアーキテクチャなのか」ということに答える必要があります。


システムは「外圧」によって作られている
 ではシステムを作った理由はどこにあるのでしょうか。それはシステムの外側です。「パフォーマンスが早いシステムを作りました」ではなくて「100万人のユーザーが使えるシステムを作りました」と言う必要があります。つまり、様々な要求や制約を叶えるためにシステムは作られています。

 言い換えれば「システムは要求や制約によって作られている」といえます。

 僕はシステムを作り上げるための様々な要求や制約を、システムへの「外圧」と呼んでいます。外圧という考え方は深澤直人氏がデザインの輪郭で語っていた選択圧という言葉と同じです。僕のエントリ「デザインの輪郭とITアーキテクトの役割」から引用します。

深澤氏は、こうした"プロダクトが生み出す心理結果"みたいなものを、状況がプロダクトにかける圧力、選択圧と呼んでいます。その圧に対して、プロダクトが"張り"を保てるように形作るわけです。

つまりプロダクト自身がカタチを決めるのではなく、プロダクトへの外部圧が、必然としてプロダクトのカタチを決定するという考え方を持っています。

 システム自身が仕様を決めるのではなく、システムへの要求や制約といった外圧が、システムの仕様を決定するわけです。


システムは外圧と内圧でできている
 一方、システムの中身は外圧に対応するように内圧が存在します。外圧を支えるための機能やアプリケーション、フレームワーク、そしてアーキテクチャというのが内圧に当たります。

 つまり、システムとは「要求や制約といった外圧」と「アーキテクチャや機能といった内圧」によって成り立っているのです。

 これは以下のような図で理解することができます。点線の部分がシステムの輪郭です。


ITアーキテクトは「そのシステムがある世界」を創っている
 そして、この図の全体が「そのシステムのある世界」です。僕が最初に言ったITアーキテクトの役割というのは、この世界全体を想像し創り上げることにあります。それによってシステムやアーキテクチャが、それを作り上げる理由とともに見えてくるのです。

 「そのシステムがある世界」の範囲というのは外圧の及ぶ範囲という理解でいいでしょう。社長から要求があれば社長が含まれますし、ユーザーへのサービス提供であればユーザーも含まれます。
 しかも、将来にわたってのサービス提供であれば時間軸も考慮しなくてはいけません。予測も外圧と理解することができます。たとえばユーザー数の増加予測とスケールアウト戦略というのは、外圧が予測される要求であり内圧がスケールアウト戦略になります。


次回に向けて
 さて、次回は外圧と内圧を掘り下げようと思います。ITアーキテクトが最初にすべきことは外圧の発見であり、その解釈です。

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2006年11月06日 19:40に投稿されたエントリーのページです。

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