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IDEOが考えるソーシャルでサステナブルなデザイン

 世界的デザイン集団IDEO社のデジタル部門リーダーであり、デザイナーズ・アコードのファウンダーであるヴァレリー・ケーシーのプレゼンを聞く機会がありました。テーマはソーシャル・デザイン。


Aquaduct
 一番印象的だったのは、Aquaductというプロジェクトの話。Aquaduct は途上国における水の問題を対象にしたコンセプトビークル。見た目は自転車ですが、水の「浄化」と「輸送」という問題を同時に解決しようとしています。


by gordonr

 途上国では水の問題は深刻です。水を手に入れるためには女性が長い距離を歩かなくてはならず、浄化もままなりません。Aquaduct は後部のタンクに水をいれて輸送することが出来ます。また、タンクにはフィルターが内蔵されており、ペダルを漕ぐ力を利用して浄化処理を行います。浄化された水は前部に据え付けられたポリタンクに溜まっていく。また、クランクを切り替えることで、自転車を動かさずに浄化だけをさせることもできます。

 これはこれで非常に面白いのですが、なるほどと思ったのはこの続き。

 この自転車を見て「途上国ではコストが合わない」「自転車を運転できるような道路状況じゃない」という批判をするヒトがいますと。でも、「それでいい」と言うのです。「その上で、一緒に解決策を考えてくれることが大事だ」と。この自転車は「途上国における水の浄化と輸送という、解決したい問題を浮かび上がらせた」という時点で、コンセプトモデルとしての目的を果たしているからです。そして、このデザインチームは引き続き、コストや輸送上の制約について検討を続けていると。


MoneyMaker Deep Lift Pump
 もう1つ。「サステナビリティというのは様々な要素によって成り立っている」と言うこと。それは、ビジネス、組織、ヒト、テクノロジー。これらの要素がバランスがとれて、初めてサステナブルであると言えるわけです。

 この例が「MoneyMaker Deep Lift Pump」。


by AIDG

 トレーニング用のステッピングマシンにインスパイアされたというコイツは、ケニヤで実際に導入されている人力の灌漑用ポンプ。材料も安価なので現地で生産が可能です。
 このポンプは非常に楽に動かせるようにデザインされているので女性でも使うことが出来ます。ポンプを使って灌漑を行えば、農園はそれに対してお金を支払うのです。「MoneyMaker(金を生む)」というあけすけな名前は、女性でも簡単にお金を得ることができる、という意味が込められているのです。


ソーシャルでサステナブルなデザイン
 往々にしてテクノロジーを持つ人間は、テクノロジーによって問題を解決できると信じがちです。でも、世の中そんな単純ではありません。そのテクノロジーが使えるのかは「使う状況による」わけです。Aquaductが良い例ですね。一方、MoneyMaker は、ケニヤの状況を良く理解したヒトがコンセプトを作っているはずで、そのためにあえてローテクなデザインを行ったのです。

 環境問題にしても同じ事ですが、大事なことは「問題の解決策そのもの」を提示することではなくて、「問題を解決したい」と多くの人々の気持ちを揺さぶること。Aquaductのデザインは「俺たちが解決してやる」という視点ではなく、「こういう問題があるだよという視点の発見そのもの」だったと思うのです。

 そういうときにデザイナーが創るべきなのは「閉じた解決策」ではなく「開いた問題提起」。ヴァレリーは「オープンに議論をすることが大事」ということを何度も強調していました。1つの価値観に立ち止まっていては解決はない。多様な価値観で試行錯誤を繰り返していくことが重要だと。

 そうなんです。そもそも単純に解決できる課題なんてない。だから、課題の解決に向けて、みんなを持続的に向かわせることそのものをデザインするべき。それがソーシャルでサステナブルなデザインなのだと感じました。


 これはエンタープラズにおけるICTサービスに置き換えても通じる内容でしょう。ソーシャルなICTサービス、サステナブルなICTサービスとは何か。単純にテクノロジー"だけ"、ビジネス"だけ"では、皆を巻き込めないし、持続もしない。ヒト、そして組織と、どう関わっていくのか。ちょっと遠いところからでしたが、自分が目指しているモノとリンクできる気がしました。

 それにしても、IDEOのプレゼンはかっちょいい。シンプルなダイアグラム、短いテキスト、そして写真を使っただけだけど、ものすごくインパクトがありました。そのうち真似してみよう。

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2009年02月08日 21:37に投稿されたエントリーのページです。

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