某所でバックキャスティングという言葉が流行っているようで。(バックキャスティングのススメ、What's inspire me ?さんから未来を描く方法を教わりました。)
バックキャスティングとは、スウェーデンの環境NGOであるナチュラル・ステップの創設者カール・ヘンリク・ロベール博士が提唱している未来予測の手法です。
氏によると、個人レベルでは皆がバックキャスティングを使っていると。
例えば、私たちは、新しい土地で仕事を始めることになったとすると、まず、最初に、どのような家に住むかその原則のレベルを明確にする。1.職場に近いところにあること、2.家族の人数に合った大きさの家であること、3.給料の中で支払える家賃であることなのだ。それから、バックキャステイングをして、その理想の家に合う家を探す。職場のある都市から遠い所に家を買ったり、家賃が払えないような大きすぎる家を買うことない。
つまり、一定の継続性を持った問題(住み続けなくてはならない)に対処する場合に、その状況を維持するための「持続可能な原則(職場からの距離など)」を定義し、原則に基づいた上で実現するための具体的な行動(理想の家を探す)を策定するという手法です。
動的な未来を考える
さて、バックキャステイングですが聞いたときには違和感がありました。だって、そもそも重要なのは「持続可能な原則を定義し」という部分のはずです。ここを言わないでバックキャステイングといってもなぁと。僕は、持続可能な原則を見つけるために「動的な未来を考える」というのがキーワードになると思っています。
動的な未来というのは、人が実際にある状況で動いていることです。前述の家の例で言えば、「1.職場に近いところにあること、2.家族の人数に合った大きさの家であること、3.給料の中で支払える家賃であること」というのは、ちと静的過ぎます。
実際には、もっと具体的なイメージを持つはずです。例えばですが、こんな感じ。
1.職場に快適に通えること。ラッシュアワーの電車よりも、車で。
2.家族の5人が、それぞれのプライバシーを保ちつつ、一緒の時間を居間で過ごす
3.家賃を確保しても、週1回の外食が保てること
こういう動きのあるイメージを持つことによって、初めて「持続可能な原則」を定義することができるような気がします。これは棚橋さんの言うペルソナデザインやUCD(ユーザー中心デザイン)という考え方につながると感じています(参照:UCDだったり、ペルソナだったり、マジ使えます。)。
フォアキャスティングの有効性
ところで、バックキャステイングと対になるのがフォアキャスティング。いわゆる予測・予報です。フォアキャスティングは、過去の実績に基づいて未来を、その連続的な線上にあると仮定して予測を行います。いわゆる静的な未来を考えること。
環境問題では、環境に影響を与える因子が複雑であり、非連続的に問題が発生するためにフォアキャスティングの手法が向いていない。そこで、バックキャステイングが有効になるわけです。
とはいえフォアキャスティングが変化に弱い手法だということではありません。フォアキャスティングは過去からの延長ですから、ある程度の予測される範囲に答えが収まります。ですから、フォアキャスティングは計測のための指標として非常に有効です。ある時点でフォアキャストされた値を基準として、経過とともに一定の割合以上のズレが生じれば、それをもって警告を発することができます。
家の例でいえば、次のような感じでしょうか。
1.前回の家よりも直線距離は遠い。しかし、説明では車での時間は早い。これは道が広くて渋滞しないからだ
2.前回の家よりも面積は狭いが、同じぐらいの広さに感じる。これは収納が少ないのだろう。
3.前回の家よりも家賃は高いが、周辺のセキュリティが高いのだろう。
予測は予測でしかありませんが、予測値に意味が無いわけではありません。フォアキャスティングで定義された基準を元にPDCAサイクルを正しく行うことで、変化が多くてもすばやく適応することができるのです。
システムの未来を動的にも静的にも考える
で、システム設計も同じことです。未来を静的(フォアキャスティング)も動的(バックキャステイング)にも考えることが重要です。
なんとなくのイメージですが、ハードウェアもソフトウェアもインフラストラクチャーに近いレベルはフォアキャスティングによるPDCAが重要であり、機能やユーザビリティについてはバックキャステイングが重要に思います。あぁ、うーん、でもなんか違う気もするなぁ(w。
未来を予測するというのは簡単なことではありません。ですから、ビジョンを定義しつつ、計測して適応しながら進むのです。両方とも大事にしたいですね。
