« Agile Japan 2010にて講演します | メイン | 変化を受け入れるアジャイルなプロジェクトマネジメントと現場 »

拡張する空間 - 建築家とITアーキテクトがつくるもの

 『拡張する空間 建築家とITアーキテクトがつくるもの』は、建築家 藤本壮介とITアーキテクト 鈴木雄介(私)の3回にわたる対談の記録です。

※4月2日には書店で手に入るようになるはずです。なお、6月後半にイベントを予定しています。5月ぐらいになったら募集すると思うので、興味のある方はこのブログかTwitter(@yusuke_arclamp)をウォッチしていてください。


 IT業界でも藤本壮介をご存じの人はいるでしょう。2008年には情緒障害児短期治療施設で日本建築大賞を受賞、今年は本書でも紹介されている武蔵美の図書館が竣工予定です。また、2009年にはNHKのトップランナーで紹介された日本を代表する若手建築家です。

 本書は 1.対話の開始、2.ITの視点、3.建築の視点、4.振り返りという4つの章から成り立っています。

対話の開始 – 「つくる」という循環
 建築家とITアーキテクトが対談をして何を話したらいいのか。初対面の僕らは”建築家/アーキテクト”という言葉から手探りで対談を開始します。そして互いの風景を交換するうちに、いくつかの言葉に話が集約して議論が進んでいきます。関係性、コミュニケーション、場、空間…、おそらく、それぞれの業界の中ですら捉える人によって意味が変わりそうな曖昧な概念ですが、それらの言葉を通じて、僕らは同じコトを違う方法で成し遂げたいのだという予感を獲得します。

ITの視点 – オブジェクト指向—空間の言葉
 ソフトウェア構造は均一ではなく、対象とする処理の特性/環境/将来性といった諸要件から様々な構造を取り得えます。過去からソフトウェアが対象にすべき処理は複雑化の一途をたどっていますが、同時に構造的な工夫も進化し続けています。この歴史を追いかけるなかで「機能から関係へ」と、そのデザイン意図が変わっていく様が語られていくと、建築とITが実は時代性を共有していることに気づくのです。

建築の視点 – 万里の長城—把握できない全体性
 藤本壮介の作品を見ていると、そこでデザインされている対象が構造物だけでないということが分かります。その設計や施工のプロセスを話すうち、建築の「関係のない関係の実体化」やITの「全体性の欠如」について議論は進みます。そして、建築とITの近似と、一方での相違に改めて驚くことになるのです。

振り返り - あとがき
 あとがきに書いたのは「物理空間と情報空間という2つの空間をいかに融合させるか」ということではありません。2つの空間が融合されることが予感として出現しているなかで、それぞれの業界で何をすべきかという片鱗です。この本に書かれているのは「歩き方」ではなく、「歩けるという予感」であり、掴まり立ちの幼児が偶然にも段差につっかかり「思わず歩いてしまった体験」なのです。


個人的な感想
 今読み返しても、ITと建築の密接で奇妙なリンクに驚かざるを得ません。本当に初対面で何もないところからスタートした対話が、こういった形で立ち上がってきた。それは構造によって物事を表現するという"構築者"という立場を通じて建築とITが互いに理解を示せたということかもしれません。

 一方で、僕にしても、藤本壮介にしても、それぞれの業界での"平均的な意見"の持ち主ではなく、むしろ既存の枠組みから脱却するために、常に疑いと好奇心から行動している者同士。本体から奇妙に伸びすぎた触手が偶然にも出会っただけで、その本体同士は歩み寄りたいなどと感じていないのかもしれません。

 だとしても、出会えて語り合えた経験は非常に刺激的で、この本を読む人にも同じような刺激があればうれしいかぎりです。ぜひ、BlogやTwitterなどで意見を聞かせて頂ければと思います。


謝辞
 この本は多くの人の協力でできています。編集者の羽角さんと延藤さん、ブックデザインをしてくれたPLUSTUS++の柴田さん、表紙写真を加工してカバー画像を作ってくれた村井さん、その画像加工フィルタを書いてくれた石橋さん、ありがとうございます。そして、この対談にインスピレーションを与えてくれた全ての建築家、ITアーキテクト、デザイナー、エンジニア、芸術家、科学者、その他の人々に感謝します。
 僕らは巨人の肩に立ち出現しつつある未来に向かっています。そして、この本も巨人の一部となることを願っています。


490261135X拡張する空間 建築家とITアーキテクトがつくるもの
コム・ブレイン 2010-04-02

by G-Tools

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.arclamp.jp/mt33/mt-tracback.cgi/2748

コメント (1)

はじめまして。

視点は違いますが、同じようなことを考えていました。
大学で建築を学び、現在ITコンサルをしていますが、本当に似ています。

ご紹介の本、気になりました。是非読んでみたいと思います。

よろしければ、私のブログも読んでいただければと思います。

http://taichifukushima.blog129.fc2.com/blog-entry-19.html

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)

About

2010年03月31日 20:30に投稿されたエントリーのページです。

ひとつ前の投稿は「Agile Japan 2010にて講演します」です。

次の投稿は「変化を受け入れるアジャイルなプロジェクトマネジメントと現場」です。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。

Creative Commons License
このブログは、次のライセンスで保護されています。 クリエイティブ・コモンズ・ライセンス.
Powered by
Movable Type