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エジソン 理系の想像力

 エジソンといえば発明家、というのは間違った認識で事業家であったということは良く知られています。エジソン理系の想像力は大学の講義としてエジソンを紹介したものをまとめたもの。

 エジソンのすばらしさは、自身の発明を「システム」として捉えていたこと。白熱灯(いわゆる電球)については、

エジソンは「電気を商業的な日用品に仕立て、広域に電気機器をばらまき、消費者がこれを使うように仕向けたかった」と言っています。かれは電気を大衆の消費財に仕立てることに関心をもっていたのでした。

 彼が電気事業のために考えたエジソン・システムは実に広い範囲に及びます。まずランプや発電機の技術も広域への配信を前提として考えられています。ランプのフィラメントは送電距離をいかに伸ばすために設計されており、発電機はスケーラビリティのために並列稼動が可能になっていました。さらに電気事業として必要な要素、スイッチ(各家庭でON/OFFができるように)、ソケット(家庭内でランプの交換が可能なように)、メーター(電気料金を請求するため)、送電線の地中埋設技術(漏電防止)、ヒューズ(漏電防止)を発明しています。

 そしてエジソン電気照明会社を立ち上げます。さらに、電球会社、電線会社、機械製作所(発電機の製造のため)も設立します。しかも、この立ち上げには資本家(JPモルガンなど)から資本投資を受けていたそうです。

 ところが惜しむらくは彼のシステムが直流を前提としており、のちにより優位な交流にとって変わられてしまったことです。それにしても、ここまでシステム全体に対してビジョンを持っていたというのは驚嘆すべきことでしょう。


 交流と直流のように、エジソンは技術ヲタとして未来を読み違えることがあります。彼のもう1つの有名な発明といえば蓄音機。彼の蓄音機における録音媒体は、このポスターの通り円筒形でした。

by jessamyn

 一方、円盤型がその後の市場を席巻します。

by Michael Way

 エジソンは円筒形の方が録音/再生スピードが一定で品質が良いと思っていたようです。ところが円盤型の方が大量生産が行ないやすかったため普及します。円盤型は型抜きで作れますが、円筒型はいちいち元音から録音が必要だったそうです。
 
 彼の音へのこだわりは広告にも現れていたいました。flickrで見つけることができましたが、THE ACME OF REALISM(究極のリアリズム)、下は切れていますが、「子供が楽隊を探す」 と書かれています。あまりにきれいな音なので、子供が斧で蓄音機を壊して中に楽隊が入っていないか探そうとしている、というものだそうです。なにも斧を持たなくても(w、とは思いますが面白いですね。

by the waving cat

 エジソンは録音媒体でやぶれますが、技術の標準化運動には力を注いでいたため、円盤型でも業界標準が作られるのに一役買ったようです。完全に実現はしなかったようですが、生産方式の標準化やオートメーション化にも興味をもっていました。


 そして、エジソンといえば特許。映写機では業界内で特許連合を組み市場を独占しそうになりますが、政府から訴えられて敗れてしまいます。当時、エジソンが攻撃した相手は南カルフォルニアに逃げることになるのですが、彼らがハリウッドの祖となったそうです。


 本書を読むと、エジソンにとってのテクノロジーというものが、そのテクノロジー単体としてのすばららしさではなく、システムやアーキテクチャとしてどのような意味があり、どのように構成されるかをきちんと考えていたことがよくわかります。彼の得意技は、個別の技術要素に新規性はなくても、その組み合わせの妙で商品を出荷するというものだったようです。
 ま、今の僕らから考えればエジソンの強引さや甘さについてツッコミをいれればきりがないわけですが、あの時代にとってはすばらしいイノベーター&ビジョナリーであったことは間違いないでしょう。現在で考えれば、テクノロジーを「持続可能なエコシステム」としていかに捉えるかが重要といえそうです。
 さっくりと読めて、面白くて、そして考えさせられる1冊でした。


462208323Xエジソン理系の想像力
名和 小太郎
みすず書房 2006-09

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2006年11月01日 10:19に投稿されたエントリーのページです。

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