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計算不可能性を設計する

 計算不可能性を設計する―ITアーキテクトの未来への挑戦は、社会学者の宮台真司さんとITアーキテクトの神成淳司さんの対談。まぁ、はっきり言えばデンパ系ですが個人的には気に入りました。


 「計算不可能性を設計する」という主題は面白い問いかけです。デジタルなビットの世界では全てが計算可能になっています。

 しかし、セカンドライフに感じるリアリティは計算不可能性があるからこそ。つまりセカンドライフを設計するというのは、そこで人間が起しうる計算不可能性を考えた上で、セカンドライフというアーキテクチャを設計するということをあらわしています。計算不可能性を許容しうる計算された世界とでもいえばいいのでしょうか。

 だからこそ、セカンドライフという世界においてアーキテクトが与える選択肢は絶対です。

「アーキテクトの思想」とは、「社会システムのコンピューテーションを進めた際、利用者にどのような情報や選択肢を提供するかという点をアーキテクトが自分の意のままに選択できる。その際、アーキテクトは何にしたがってその選択を行うのか」ということ

 これが現実の社会においても実は同じであろう、というのが本書の1つの結論です。とはいえ、そこにある計算不可能性はやはり計算不可能なことでありコントロールするというものではありません。権力による圧倒的な支配と制御=統制は同質化による効率を目指しますが、情報を媒介にした場への介入=社会化は多様性の共生を目指していると理解できるでしょう。

 この気持ち悪さはGoogleやMicrosoftに対するものと同じなのかもしれません。「このようにすれば社会はもっと良くなる」と、あっけらかんと信じるという点においてGoogleやMicrosoftはよく似ています(本書では設立年度の違いからビジネスモデルが違うのではと言っていますが、僕はGoogleは世界の未来を創り、Microsoftは人の未来を創っていると感じています)。

  
 こうした場合にアーキテクトに求められる力が影響を見通すことであることは間違いありません。例えば技術の持つ力を技術の高さということから考えるのではなく社会に対するインパクトと解く。本書にあるようにiPodは音楽を聴くという現実を捻じ曲げましたし、AjaxもまたWebアプリケーションを捻じ曲げました。

 全般を通じたキーワードとしてアフォーダンスが使われていることも非常に納得がいきます。環境と関わりあい、そして、そこから得られた体験こそが直接的な経験となります。最後に宮台さんがあとがきに書いている言葉を。

チャルマーズの言葉を引用する。《物理的状況でひとつに決まるのは観察者の網膜上の像である。しかし観察者はこの像と直接の知覚的接触を持たない。近くに関する限り、観察者が直接に触れる唯一のものは彼の経験である》。

技術の享受「を」可能にするのは潜在的行動連関だが、技術の享受「が」新たな潜在的行動連関を開示する。社会的全体性が技術を方向づけると同時に、技術が社会的全体性を方向づける。それに無自覚であれば技術は意図せざる帰結をもたらす-。


 アーキテクトは無自覚ではいけません。これはWebアプリケーションのフレームワークを作るというレベルから、神成さんのような社会を作るというレベルまで同じではないかと思います。美しさ(感動)の享受と論理的なResponsibilityは常に同時に意図されるべきだと感じました。

 


4901391801計算不可能性を設計する―ITアーキテクトの未来への挑戦
神成 淳司 宮台 真司
ウェイツ 2007-04-14

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コメント (2)

本の紹介ありがとうございました。この本、それなりの評判です。反響がけっこうあり、編集にかかわった人間としてうれしく思っています。

ウェイツ出版部:

貴重なコメントありがとうございます。6月25日の神成さんと宮台さんのトークショーで、ご意見を取り上げさせていただき、課題の一つとして議論させていただきます。トークショーの詳細は丸善HPより、よろしければご参加ください。

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2007年05月27日 23:37に投稿されたエントリーのページです。

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