プロジェクト・ブックの中で、佐々木正人さんが書かれたコラム「アフォーダンスのフィールドから」。
日本のギブソン(?)こと佐々木正人さんは発達心理学、ようは赤ちゃんが成長にともなってどうやって動きを発達させているのかという研究をされています。
ある家庭に赤ちゃんの様子を撮影してもらっったところ以下のような段差による動きの発達トリガーが見られたそうです。
頸が据わった頃、仰向けの赤ちゃんは寝返りをしようと全身をねじり始めた。うまくいかず足で布団を何度も蹴った。全身が移動し、ベビー布団からはみ出し、布団の縁と床の数センチの段差にのった。段差が「あと押し」したように、くるりと寝返った。はいはいは、はじめの頃はゆっくりだった。部屋と部屋の間に、10センチぐらいの段差があり、ここも、尻を先にして身長に降りていた。ある日、片手を段の下について、頭から下りた。全身が突っ込んで傾斜し、はずみで一気に加速した。手足がスピードあるはいはいのリズムを獲得した。
ここから佐々木さんは、以下のような推察を行なっています。
床面にはいろいろな段差がある。赤ちゃんはそこで大胆に「落下」や「転倒」を試みる。段差だけが与えられるこの不安定が、運動を育てている。段差は移動を妨害するが、創造もしている。もしどこまでもただまっ平な床の上だけで子供を育てたら、運動発達は随分と難しくなるのではないだろうか。
仕事の段差
こうした考え方はソフト的な感性や感覚にでも通じるものがあると思います。同じように何の段差や障害もない仕事では感性の発達が随分と難しくなるのではないでしょうか。障害があるからこそ創造を生む。
段差や障害という言葉を"変化"に置き換えてみるとよいかもしれません。変化がない仕事では感性が発達しない。変化を機会として創造を生み出す。
ただし、赤ちゃんが「大胆な試行」をしても怪我をしないのは柔軟性が高いからです。落ちても転んでもダメージが少ない。だからこそ、好奇心を先に出して前に行ける。
仕事の現場でも柔軟性はとても大事だと思います。硬直した身体で「大胆な試行」をすれば大きな怪我に繋がります。どうすれば柔軟性を手に入れて段差を創造に変えていけるのでしょうか。
すごく単純ですが、やはり「日々のストレッチ」を積み重ねるしかないのだと思います。柔軟性は一気に得られるモノではありません。
勘違いしてはいけないのは、マニュアルに織り込まれた対応力は柔軟性ではないということです。それは予期された反応にしか過ぎません。結局、その枠組みの外では使えないものですし、予想外の障害には対応できません。
ですから、もっとメタ的な思考を持つ必要性があります。
「メタ的な思考」なんていうと訳が分からんとか思いがちですが、そういうわけでもないでしょう。発想法や思考法、プレゼンのフレームワーク、コンサルの分析手法、問題整理法などなど、様々な道具は世にあふれています。そうした型から入っていって、うまく自分なりに使いこなすことが柔軟性と言える気がしています。
何が起きても、それをきちんと把握し、その対処方法を明確にできることが大事なのです。
僕の場合には「アウトプットは必ず3つ」とか「相反するクロス軸」とかが好きです。
「アウトプットは必ず3つ」は要求2.0開発を読んでもらえると分かるかと。かならず3つでまとめています。3はマジックナンバーで、1だと唯一、2だと対抗になってしまうのですが、3だとバランスよく感じます。無理に3つにすることで、新しい視点を見つけ出すことも良くあります。
「相反するクロス軸」というのは相反する問題を考える場合に使います。そもそも相反する問題というのは両方とも叶えるべきこと。そこで、まずそれをX軸とY軸にとります。1はXもYも叶えられない状態。4はどちらも叶えられる状態。で、一気に4にいくのではなく、2や3を経由していけないのかと考えます。また、軸のどの辺りにいるのかも大事です。もちろん移行するのに時間はかかっても良い。
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2 | 4
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1 | 3
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他にはモデル化、メタファーなんかもよく使う手です。ストレッチと同じです。最初は痛いのですが、つらくても毎日やる。そのうちに自然にできるようになってきて、あるとき気づくとだいぶ使えるようになっている。そんな感じです。
システムの段差
もちろん、これはシステムでも同じこと。システムの柔軟性は一気に設計して作られるものだとは考えていません。設計によって作れるのは予期された反応だけです。予期しない段差に対しては対処しきれない。それでは柔軟だとは言えないのです。
もっとメタ的な設計によって段差に対するダメージを減らし、それを機会に変えるだけの概念が必要です。ですが、まだまだそのための道具は不足している気がしています。SOAやWeb2.0は良いところまで言っていますが体系化はできていません。
ま、だからこそ色々できて楽しい。そうしたメタ設計がアーキテクトの最も楽しいところではないでしょか。
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