2009/12/12に開催されたDevLOVE2009 FUSIONにて「開発を愛する僕らが目を向けるべき、ソフトウェア以外に大事な5つ4つの事」というセッションをしてきました。5つが4つなったのは、正直すまんかった。思いつかなんだ。ダウンロードはSlideShareのページからDownloadをぽちっとしてください(資料の一部がカットされていますが、これはセッションの流れで見ないと意味がないので抜いてあります)。
このセッションはpapandaさんに依頼されて考えたものです。システム開発ではない業界から、僕らの業界を見ることで学べることはあるのでは、というコンセプトです。ただし、リアリティのない話でもしょうがないので、聞いた時になるべく体感できるようなネタを選びました。4つの話をしたのですが、僕なりには「身体性と環境との相互作用」というのが共通テーマになっています。
また、セッションの後にダイアローグの時間が取られていて、聞いてくださった皆さんでチームに分かれて会話と共有がありました。僕の講演は他業界の話題ですから、システム開発に引き寄せる前に消化不良になってしまう部分もあるかなと思っていたのですが、ダイアローグがあることで「皆さんと話をして理解が進んだ」という言葉が聞こえて良かったです。というわけで、ダイアローグで頂いたフィードバックもいれこみながらエントリしていきます。
ランドスケープ・アーキテクチャ
定義はwikipediaを見て頂くとして、僕らが日常的に見るのはビルのすき間に立つような植栽です。つまり、人工的に植物を植える仕事。木を植えるというのはビルを立てるのとは違う面があります。それは時間的/空間的な環境変化を考えると言うことです。木が育つためには土や太陽や水が必要で、それらすべてがなければ木は育つことができません。しかも、樹齢20年の木を植えるなら、20年前からソコに木があったような環境にしないといけない。こうしたことを考えながらビルのすき間ある木を見ていると、それを成り立たせるための環境があることに気づけます。
システム開発でも、システムは周りの環境に影響を受けながら育っていきます。データの増加、仕様の変更、あるいは外的要因としてユーザー組織の変更や連携先システムの仕様変更。これらの環境変化を考えることがシステム開発では重要といえるのではないでしょうか。
ダイアローグでは、システムが時間とともに変化するということに共感していただき「引き継ぎ」「過去の流れを未来につなげる」「設計の賞味期限」「制約」といったキーワードが出ていました。
ビルディングタイプ
ビルディングタイプとは、建築物の中でもステレオタイプがあるようなもので学校、病院、刑務所、工場などがあげられます。どの病院にいっても、まぁ、病院らしいということ。つまり、各建物の様式に注目するのではなく、その建物の形を成り立たせている法律や規則などに注目すると言うことです。今回は刑務所の例を挙げましたが、パノプティコンからペンシルバニアシステム、資料にはないですがオーバーンシステムといった変遷を見ると、歴史上の要請から形が生まれていることが分かります。
建築の即物的な力を借りて、はじめて制度は成り立っていると言える
という山本理顕さんの言葉があるように、近代社会というのは規則をビルディングタイプにすることで無理矢理に人を規律化させているとも言えるのです。
同じようにシステムも即物的に制度を成り立たせるために作られているといえるでしょう。
ダイアローグでは、「制約が形を生み出す」「とはいえ縛られすぎない」といったことが共有されていました。
包囲光(アフォーダンス)
アフォーダンス理論を理解する上で重要なのが包囲光という概念です。人はモノを見ているのではなく、環境の表面にあるレイアウトを見ている。光の光線はレイアウトの肌理に反射しながら全方向であらゆる場所に存在します。つまり目を包囲するように光が満ちているのです(本当は空気の話とかも必要なんだけど)。そして、その光からレイアウトのエッジを見つけモノを"認識”します。同じレイアウトが見えていても、同じモノが見えるとは限らない。
これはオブジェクト指向でも同じことです。同じ情報が与えられても同じオブジェクトが認識できるとは限らない、経験がないドメインに参加すると何も認識できない、一度認識できてしまうとそこから離れるのは大変なわけです。一方で、世界は常に変化してしまう。オブジェクト指向の根本的な難しさは人間の認識に頼っている点で、その認識が優れているかどうかで設計の質に大きな影響が出てしまいます。
ダイアローグでは「パターンを業界を横断して転用するのが難しい」「チームでも役割によって見えるものが違う」といったことが言われていましたね。
認知発達ロボティクス
もうこれはビデオを見てください。エントリも書いています(身体の情報構造@デブサミDAY2)。このロボットは身体があることで、直接的に環境と相互作用しダイナミックな動きを手に入れています。
前述のようにシステム開発は人の認識に左右されてしまう。それではシステムが自律的に環境の変化に適応することはできません。であれば、システム自身が身体を持ち、直接的に環境と相互作用しダイナミックな動きを手に入れることができるのではないかと考えています。もちろん、夢の話です。
ダイアローグではソフトウェアが進化することから「ソフトウェアに死はあるのか」「データは死なないからこそ、過去の遺物を引きずるのでは」「相互作用は実はあらゆるところに現れる」などが議論されていたようです。
いずれの話もシステム開発が閉じた系だけで完結せずに、その周りにある環境と良し悪しではなく関わる必要があることを示しているつもりです。だって、世界はそのようにして成り立っているのですから。
個人的な謝辞はデブサミですね。ランドスケープはデブサミ2008のベストスピーカー石川初さんから、ビルディングタイプはデブサミ2007でMS萩原さんとセッションをした大川信行さんから、認知発達ロボティクスは突撃オファーに応じていただきデブサミ2008に来ていただいた國吉康夫教授から、それぞれ学んだことです。僕のわけわからん講演案を快く実現してくれた岩切さんに感謝。アフォーダンスも講演してもらいたいのだけど再来年かなぁ。
それから、こういった場を用意してくれたpapandaさんにも感謝。純粋に自分が興味を持っているものと、そこからの思考の連鎖を表現することができました。この数年で学んだことを振り返る良い機会になったよ。ありがとう。
