12/11に東京ミッドタウン・デザインハブインターナショナル・デザインリエゾンセンターで開催された『Design for Social Innovation and Sustainability - 社会改革と持続可能性のためのデザインネットワーク:デスィズプロジェクト』に参加してきました(サイト)。ミラノ工科大学のエツィオ・マンズィ二教授が、現在取り組んでいる「DESIS Network project」というソーシャル・イノベーションの国際的研究ネットワークプロジェクトを紹介頂きながら、デザイナがいかにして ソーシャル・イノベーションに関わるのかというのを説くというもの。

※上記サイトからの直接リンク
これは単にデザイナが持続可能なプロダクトを作るという話ではありません。デザイナとしてトレーニングを受けた人々が新しい社会のあり方を生み出すための過程に関わることで、よりよい成果を生み出そうという試みです。
まずは実例ですが、ミラノで行われているco-hausingという取り組み(サイト)。co-hausingというのは、20-30ぐらいの世帯が様々なサービスを共有しながら共同に暮らしていくという住まい方の形態です。洗濯機や大工道具の共有なんかが分かりやすい例で、僕が思うには長屋。
非常に面白いのは、新しいco-hausingの場所を生み出し、そこに人々が暮らすことまでをデザイナがファシリテートしていく過程です。「co-hausingは、そこに住む人々が創り出すもの」という理念があるため、まだ場所も何も決まっていないうちから募集を始め、デザイナ達が人々の要望を聞いたり、実際のミーティングをファシリテートしたりして場所や住まい方を決めることを支援していく。実に1年半にも及ぶプロジェクト。もちろんco-hausingで実際に使われる製品をデザインしたりすることもしますが、それはほんの一部。デザイナとして訓練された様々なスキルを活かして持続可能な住まい方を生み出す手伝いをする。
教授はそういったデザイナの仕事を『ビジョンをしめし、クオリティをあたえ、その可能性自体を具体化させること』と定義しています。『人々(一般市民/消費者)は意図せずにデザイン行為をしている。そのデザイン行為を助けることこそが、デザイナの役割である』というわけ。
そうしたデザイナの道具としてあげらていたのが、協業のきっかけとなる「フォトシナリオ」や「デザインカード」といったもの。
フォトシナリオは、実際のユーザーをリサーチしてから、ペルソナを作ってフェイクのシナリオを書き、それに従って写真を撮るというモノ。実際に「毎週、有機野菜をネットを注文して、たまにその畑に行き、農家を手伝ったりして、一緒に食事をする」というフォトシナリオを見せてもらいましたが、とても力強く魅力的でした。
デザインカードはIDEOで使われているモノが有名ですが、あれの応用版。例えばco-hausingでは、40種類のデザインカードを作り、人々が何を望んでいるかを引き出し、互いの会話のきっかけを生み出すために使っていたそうです。
そして、教授が「DESISプロジェクトの中でも、最もカギとなりえるもの」として紹介していたのがデジタルプラットフォームでした。『これまでのデジタルプラットフォームは、デジタルで関係が完結していた。その関係を現実世界に出現させることができるんだ』として、いくつかのソーシャルネットワークのサイトを紹介していました。
PledgeBank
「I’ll do it, but only if you’ll help」。個人がPledge(誓約、公約)をすると、それに賛同する人が集まって物事が成功するといったことを支援するサイト。
Activmob
いわゆるスマートモブス。カルチャークラブ的なものから海岸の掃除とか、様々なモブのマッチングサイト
TimeBanks
Time Dolla。誰かを助けるために時間を使うと、その報酬が時間ドルとして銀行に貯まり、その仮想通貨で取引ができる。コミュニティ通貨。
この話は非常に勇気をもらいました。僕らソフトウェアエンジニアだって、社会改革や持続可能性のためのデザイン過程に参加できるって事ですからね。教授は『デジタルなソーシャルネットワークが、人々をつなぐ。そこからムーブメントが生まれ、社会を変えていく可能性がある』と何度も繰り返されていました。
僕は企業システムに関わっています。だからお金を払ってくれる顧客のためにシステムを作る。それはとても大事なことだし、間違いではありません。でも、僕自身は、その先にいるユーザーを通じて社会をより豊かにすることにコミットしたいと思っています。残念ながら情報システムだけがあっても人々を豊かにすることは難しい。でも、可能性がある。情報システムが人々をつなぎ、コラボレーションさせることで、豊かな社会に向けた変革を助けることができるのです。その意思は持ち続けたい。
97本で「コミュニケーションの総体をデザインせよ」と書きました。情報システムはコミュニケーションの道具なのです。道具の出来が良いことは大事です。でも、その道具をどういったコミュニケーションに使うのかを考えておかないと出来の良さは自己満足に終わります。
これは企業システムを作っていようが公開サイトを作っていようが同じことです。繰り返しますが、大事なのは情報システムが直接的に何かをできるわけではないということ。情報システムに関わる人に求められるのは、そういう意思を持った人々(ユーザー)を支援し、そのプロセス全体をデザインすることなのです。
