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デルは顧客志向なのか

 元電通総研の社長が書いたという広告会社は変われるかを読んでいるのですが、うーん、微妙。

 例えば、その中の一節。

インターネットの出現は、メディアだけでなく、企業も変えてしまった。

「見込み生産・大量生産」ではなく、「まず顧客(個客」ありき」という経営スタイルの誕生を意味したのである。<中略>「製造と顧客の立場が逆転するモデル」は、「注文生産ではあるが大量生産である」というところに最大の特徴がある。いわゆる「マス・カスタマイゼーション」である。

マス・カスタマイゼーションを体現したのが、2001年にパソコンの出荷台数で世界一の座についたデル・コンピュータの「ダイレクト・モデル」である。デルでは、「まずモノありき」ではなく、「まず顧客ありき」である。そこでは、顧客はインターネットを通じて注文を出す。もちろん、いまだ従来方式に馴染む顧客もいるので、電話での注文も受けていけているが、インターネットでの注文を前提としている。

 これはデルの一面しかとらえていません。フラット化する世界(下)で紹介されていますが、デルがインターネットを最も活用しているのはグローバル・サプライチェーンです。

10時、この日は朝から多数の客が40ギガバイトのノート・パソコンを注文したため、サプライチェーンで2時間以内に40ギガバイト用の部品が足りなくなくなることをデルは把握した。この情報は自動的に、デルのマーケティング部門とDell.comと注文を受けるデルの電話オペレーターに伝わる。たまたま10時30分に電話をかけて注文すると、電話に出た担当者はこういう、「トム、ちょうど良かった!この1時間はキャンペーン中なので、あなたのノートパソコンに40ギガのドライブの値段プラス10ドルで60ギガのハードドライブをお付けできるんです。いまご注文いただくと、キャリーケースも無料でお付けします。大切なお客様ですから」こうした販売促進によって1時間か2時間で調整が行われ、ノート・パソコンやデスクトップのあらゆる部品に対する需要が、グローバル・サプライチェーンで予定されている需給と一致する。

 デルは「まず顧客ありき」とか「まずモノありき」といった次元ではなく、顧客を巻き込んだグローバル・サプライチェーン全体における調整能力と持っていることが重要なのです。ある意味モノも顧客も需給のバランスを取るための手段に過ぎません。もちろん顧客がお金を支払ってくれるわけですから、その事実を忘れてはいけませんが、デルのすごさは「パソコンを作って売る」というエコシステムを完成させている点にあるのです。そのインフラとしてインターネットが機能している。

 これを単なる顧客志向と考えてしまうと色んなものを読み違えてしまいます。インターネットによるBTO(ビルド・トゥー・オーダー)はデルにとってはサプライチェーンの端の話なのです。だから電話での受注も当然、行われます。別に顧客接点をインターネット前提にする必要性は全くありません。店頭でも売るし、FAXでもいいし、コストさえ合えばなんでもいい。


 インターネットで力を持つのは「顧客」、つまり「企業にお金を払ってくれる人」だけではありません。この考え方は所詮、企業と顧客というステレオタイプから抜け出せていない。むしろ自らお金や価値を生み出す力をもった民衆全体が変容している。彼らは「企業がお金を払う人」になりうる。

 そもそも企業と顧客とは何か、というところから考えなおすところから始めないと。サプライチェーン、全てが鎖のように連鎖するとはどういうことか。フラット化する世界で「デルの紛争回避理論」なんで物がなぜ出てくるのか。


 ちょっと正直言って残念なレベルでした。2000年前後に話されていたことをベースにしていてネットの本質に近づいていない印象。これで「マスメディア依存体質からの脱却シナリオ」といわれても、ちょっとなぁという感じです。この本は、もう1回ぐらいDISるかも。

4478550212広告会社は変われるか―マスメディア依存体質からの脱却シナリオ
藤原 治
ダイヤモンド社 2007-02-17

by G-Tools
4532313783フラット化する世界 [増補改訂版] (下)
トーマス フリードマン 伏見 威蕃
日本経済新聞出版社 2008-01-19

by G-Tools

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コメント (2)

Paul Nakagome:

「顧客指向になろうとしている」というリサーチがあるようです。
http://gartner-b3i.jp/research/inf_08/index.html

おー、これは面白いリサーチですね。こういう企業が顧客に向き合うときに、どういう戦略に出るのかが楽しみですね。

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2008年01月10日 00:48に投稿されたエントリーのページです。

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