500年前にコロンブスが旅をしたとき、世界は間違いなく丸いことを証明した。しかし、現代に私が旅をしたき、世界がフラットになっていたことに気付いたのだ。
こんな感じの書き出しで始まるフラット化する世界。誤解を恐れずに言えば、これは広義のWeb2.0 - 社会環境の変化であり経済・文化・政治環境の変化 - を説明した今年最高の本です(たぶん)。変なWeb2.0本を読んで「Web2.0って要はマーケティングか?」とか思うぐらいなら、こいつを見て衝撃を受けてください。2.0世界に今起きていることを考えれば、狭義のWeb2.0なんか小さな話です。
AjaxやRFIDやプロトコルなど技術要素の説明には???なところもありますが、それを差し引いてもインターネットによってグローバル化された世界を見事に表現しています。個別のニュースとしては知っていたようなことをを繋ぎあわせ、分析し、ある見地をもたらしてくれるます。ぜひ読んでいいただきたいです。
少しだけ概観を。筆者は1990年代半ばから末にかけて登場し、2000年を超えて結実する"フラットな世界のプラットフォーム"の過程を次のように説明しています。
まずベルリンの壁が崩壊し、ウィンドウズが開き、パソコンが普及した。それらが重なって、個人が自分のコンテンツを作り上げてデジタル化することが、これまでになく簡単になった。インターネットがひろまって、ウェブの時代が始まり、ブラウザや光ファイバのおかげで、人間同士の結びつきがいまだかつてないほどひろがった。
最後に、標準化された送信パイプとプロトコルの登場により、だれでもコンピュータやソフトウェアを互いに接続できるようになった。また、ビジネスプロセスの標準化の発展を促し、特定の商取引や作業手順のスタンダードができあがった。
つまり、さらにより多くの人々が切れ目なく結びつき、よそのデジタル・コンテンツについてむらなく共同作業をおこなうのが、これまでになく楽になった。
そして、このプラットフォームが共同作業の6つの姿、"アップローディング"、"アウトソーシング"、"オフショアリング"、"サプライチェーン"、"インソーシング"、"インフォーミング"を生みます。簡単に説明しました。
- アップローディング:コミュニティ、オープンソース、ウィキペディア、Amazonの書評、ブログ、参加のアーキテクチャ
- アウトソーシング:社内でやってき特定の機能(研究、コールセンター、会計処理など)を抜き出して、他社にまったく同じ機能を果たさせ、その作業を戻して会社の全体的な業務に組み込む。インド。
- オフショアリング:アウトソーシングとは対照的に工場を丸ごと移設してしまう。中国
- サプライチェーン:世界中のあらゆる場所から金銭面でも安全性でも効率的に、需給のバランスを見ながらモノを動かす。ウォールマート、ザラ、デル
- インソーシング:グローバルなサプライチェーンを他社に管理してもらう。UPS
- インフォーミング:検索。Google、TiVo
さらにこれらの6つの共同作業を、よりデジタル化し、モバイル化し、バーチャル化し、パーソナル化する要因をステロイドと呼びます。上げればきりがないほどの技術。PDA、無線LAN、iPod、CPU、メモリ、ブロードバンド、P2P、Skype、RFID、ケータイなどなど。
そして、これらの要素が全て一気に収束することで新たな世界、フラットな世界が誕生したと指摘しています。
ここまでもかなり面白いのですが、引き続く下巻ではフラット化した世界で、どうしていくべきなのかというのがテーマになります。教育、雇用、政治、経済、テロリズムなど。個人的には下巻の方が深い話で好きです。
下巻では全体を通じてアメリカ人らしい楽観主義が意図的に貫かれています。フラット化した世界は、つながりたくなくてもつながってしまう世界。だからこそ、関係しあうことでお互いを高めあう。
いくつも面白い話があったのですが印象的だったは「デルの紛争回避論」。デルのPCを組み立てるためのグローバルサプライチェーンに組み込まれた国は紛争を回避するというものです。
例えば中国と台湾が独立問題で軍事行動を含むような紛争状態になれば、両国はグローバルサプライチェーンから切り離さてしまうはずです。そうすれば戦争で得るもの以上に長きにわたり高い経済的な代償を支払うことになります(もちろん世界各国も大打撃です)。
実際にインドとパキスタンが緊張状態にあった時はバンガロールの人間がロビー活動を行い、数多くのアメリカ企業が大使館を通じてメッセージを発したそうです。紛争を回避したのは「ゼネラル パウエル(パウエル国務長官)」ではなく「ゼネラル・エレクトロニクス(GE)」だと。
フラット化された世界だからこそグローバル経済が政治の抑制力となるというのは信じるべきだし、そうでないといけないと思います。無償の奉仕はすばらしい行為ですが、健全な経済学がなければ継続しえない。しかも、今となってはグローバルな視点で考えなくてはいけない。
この視野を意識しながら色々なことをしていきたいものです。
![]() | フラット化する世界(上) トーマス・フリードマン 伏見 威蕃 日本経済新聞社 2006-05-25 by G-Tools |
![]() | フラット化する世界(下) トーマス・フリードマン 伏見 威蕃 日本経済新聞社 2006-05-25 by G-Tools |


