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テクノロジストの条件

 テクノロジストの条件は、ドラッカーの文章をテクノロジストという視点から集めた、いわば短編集。これはエンジニア必読です。とくに人月に悩んでいる人は、がつんとやられること間違いなし。


知的労働とは何か
 第5章「知識労働の生産性」では、こう語られます。

 20世紀の企業において、最も価値ある資産は生産設備だった。しかし21世紀の組織において、最も価値ある資産は知識労働者とその生産性である。

 20世紀は肉体労働、つまり働くことが物質的な生産に繋がる行為の時代でした。これが驚異的に生産を高めたのはフレデリック・W・テイラーの科学管理法です。それは、

 はじめに仕事を個々の動作に分解する。次いで、それらの動作に要する時間を記録する。次に無駄な動作を探す。(中略)次に、不可欠なものとして残った動作を短い時間で簡単に行なえるようにする。それらの一新された動作を組み立てなおす。

 これが生まれたのが約100年前。いまとなってはなじみあるこの手法によって肉体労働的な生産量は急激に高まりました。これは合理化と考えてよいでしょう。

 ドラッカーは、こうした肉体労働の時代から知的労働の時代に移り変わっていると指摘します。そして、知的労働の生産を伸ばさねばならないと。

 知的労働というのは"量"で量れない労働と定義できます。そして、実際には多くの作業が知的労働に属しています。

 教師の仕事は生徒の数では評価されない。何人の生徒が本当に学んだかが問題である。質が問題である。病院の検査室にしても、役に立つ検査をどれだけ行なったかが問題であって、検査の数が問題ではない。(中略)

 知的労働の生産性は質を中心に据えなければならない。しかも最低を基準にしてはならない。最高ではないにしても最適を基準にしなければならない。量の問題を考えるのはそのあとである。

 そう、僕らのシステム開発も知的労働です。システム開発の仕事は、コード量では評価されません。作られたアプリケーションが、どれだけの価値をもたらすかで評価されるべきなのです。量の前に質。

 しかし、システムの現場で導入されている方法論のほとんどが、製造業のそれを元にしているという事実。ドラッカーの指摘に従うなら、僕らにとってプロセスの合理化による生産量の向上は、今すぐ取り組むべき課題ではないのです。
 これは、僕にはちょっとした驚きでした。もしかしたらアジャイルも肉体労働という呪縛から逃れられていないのかもしれません。


質とは何か?
 ただし質の評価には大いに議論の余地があります。特にシステム開発における質は、まだまだ測定できるものではありません。ここでもドラッカーは言います。

 だが本当の問題は、仕事の質の測定にあるのではない。そもそも仕事が何であり、何でなければならないのかを明らかにできないこと、ときには大きく意見が分かれることになる。

 (中略)仕事の定義の仕方そのものが、知識労働の質の定義や生産性向上の方法を変える。何を成果とすべきかは意見が別れ、リスクもともなう。(中略)ただしこれを実際に行なうことは、ほとんどの組織にとって、またほとんどの知識労働者にとって未経験の新しい課題である。そのうえ、答えを得るには議論を必要とする。しかも意見の対立は避けられない。

 この試行こそが、まさに僕らが今すべきことなのでしょう。アプリケーションの質とは何か、価値とは何か。様々な議論をすべき時です。


 この本では、繰り返し技術や仕事の歴史が書かれています。これを読むと僕らが常識と思っているものが、過去においていかに異端な考えであったか、そして今の僕らの常識も間違っているところがあると気付かされます。
 知識とはなにか、労働とはなにか、技術とはなにか。自分のしている仕事を見つめなおすために必要な一冊となりました。

4478300720テクノロジストの条件
P.F.ドラッカー 上田 惇生
ダイヤモンド社 2005-07-29

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コメント (4)

shin:

yusukeさん

氏は、組織の主要目的は、顧客(市場)の創造であるり、消費者への感性と革新的な製品やサービスを提供することにあることと述べてます。

我々のなすべき仕事についてまた語りましょう。

それにしてもやっぱドラッカーいいでしょ。ネ。ネ。
だからもっと早く読んで欲しかったの。
ついでにプロフェッショナルの条件も読んでください。
私がテクノロジストの条件とともにエンジニア(というか知識労働者)に読んで欲しいと思ってる本です。

hasegawa:

テクノロジスト、僕も読みました。
で、あの本の内容には、ずっとイケテナイSIerにいた人間として、頭では理解できても心情的に拒むところもあります。
石油産業が隆盛になって、炭坑労働者がいなくなってしまった寂しさというんでしょうか、そういう寂しさを感じて、拒んでしまうんでしょうか…
ユースケさんが書いていた「僕ら」の範囲外には「現代の炭坑労働者」となる人達が多くいるんですよね。やっぱり…
その甘い考えがオマエの限界なんだと言われれば、まぁ、その通りで、打開策もないし、僕も困ってるんですが(^^;)

shinさん、プロフェッショナルの条件は前に読んだことあります。が、今読むと違うかもしれませんね。読み返してみます。

hasegawaさん。確かに炭坑労働者という職はなくなるのでしょうね。もちろん、その分の新しい職は生まれるでしょうから、そちらにシフトするはずです。炭坑労働者してた人が全員不幸だというわけではないでしょう。
でも、この問題は難しいです。僕がSIerの中の人なら、そうも言い切れないのかもしれません。
でもでも、やっぱり前に進みたいです(w。

hasega:

炭坑労働者の為に石油を利用しなければ、現代の生活はない訳ですから前に進んでゆくのが正解ですよね。
それに、年寄りがなんと言っても聞かないで前に進むのが若者です(^^)
僕もまだまだ、年寄りの仲間入りはしないつもりですけどね(皆が若いって言ってくれれば良いけど…?!)。

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2006年06月05日 00:16に投稿されたエントリーのページです。

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