デザインの輪郭は深澤直人氏へのインタビューを元に、自らが解説を加えるという形式で構成されています。
深澤直人氏といえば、最近ではauのneonをはじめ、もはや伝説となったINFOBARのデザイナとして知られています。それ以外にも無印良品の壁掛け式CDプレーヤー、そして家電の±0(プラスマイナスゼロ)(ドーナッツ型の加湿器が有名かな?)などなど。いずれも、製品が持つ独特の存在感とアールが美しいです(そして、元IDEO日本支社代表でもあります)。
深澤氏はデザイナの役割を「デザインの輪郭を見つけること」であるとしています。僕は、そのものが外的に促す行為や心理を見出すこととと捕らえています。
例えば、この壁掛け式CDプレーヤー(ネットストアで買えます)。

このCDプレーヤーは換気扇のように紐、実は電源コードを下に引くことで、風を吸い込むのではなく音が流れてくるというものです。換気扇によって想起されるイメージの利用、そして電源コードという家電の宿命を利用したスイッチ。
深澤氏が目指したのは、このCDプレーヤーを見て、この文章を読んだ時にあなたの心に浮かんだ"ニヤリ感"です。そして、そのニヤリ感というものにむけて"それ以外にありえない、あるべきカタチ"を見つけることがデザイナの仕事だとしているのです。
深澤氏は、こうした"プロダクトが生み出す心理結果"みたいなものを、状況がプロダクトにかける圧力、選択圧と呼んでいます。その圧に対して、プロダクトが"張り"を保てるように形作るわけです。
つまりプロダクト自身がカタチを決めるのではなく、プロダクトへの外部圧が、必然としてプロダクトのカタチを決定するという考え方を持っています。
なかなか難しいのですが、アフォーダンスを知っている人であれば理解していただけるかもしれません。
この本には、これ以外にも深澤氏の感性が詰まっています。ぜひぜひ、これは本を読んでください。このエントリではとても伝え切れません。
デザインの輪郭とアーキテクトの役割
では、いつもの妄想。デザイナというのはソフトウェアにも、エンタープライズ・アプリケーションにも存在します。僕はITアーキテクトの役割もまた、輪郭を見つけ出すことだと思います。
プロジェクトの進め方、運用方法というのは、実は"ふつうのことを当たり前にこなす"のが最も重要なことです。
人間は仕様書だけでは仕様を理解できない、とか、人間はミスをおかす、とか。そんな当たり前のことを正しく捕らえて、どうすればそれを減らすことができるのか?と考えるだけでいい。それを地道に積み重ねていって、"ふつうなシステムを作り上げる"のがあるべき姿です。
アーキテクトはクライアントの横に立ってふつうではない部分を見つけ出して、それをクライアントに提示してあげる。一緒に考えてもいいし、手札の中に適当なものがあれば、それを提示してあげてクライアントに納得してもらう。
そして、アーキテクチャに従うことで、すべての人がふつうにプロジェクトを進め、システムを運用できるようにしてあげる。アーキテクチャとは、ふつうにシステムを作り・使えるように人々をアフォードするためにあるのです。
アーキテクトが見るべきものはソフトウェアではなく人間です。それはクライアントでもあり、プロジェクト・メンバー全員でもあり、エンドユーザーでもあります。
ITアーキテクトの役割とは、すべての人がシステムをふつうに作り・使っている行為を見出し、その行為をうながすために必要な概念やソフトウェアやハードウェアを選定することであると信じます。
この本でこれに気づけました。かなり満足です。
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