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プロダクトのオープン性。ユーザーを競争相手から開発者に

 オープンであれば技術力は(そんなに)いらないには思った以上の反響をいただきました。今回も似たような話ですが、プロダクト提供者側の視点でプロダクトのオープン性を考えてみます。


商用プロダクトはすべてのニーズを叶えられない
 商用プロダクトは複雑で誰にも真似できないようではないと困ります。だからこそ商売になります。儲ける構図というやつです。

 ところが商用プロダクトが売れなくなってきた。

 僕の解釈はこうです。いくら立派な商用プロダクトでもすべてのニーズを叶えることはできません。これまで、一部のニーズを元に作られていたものを、ニーズには完全にあわない(あるいはオーバースペックな)人々が渋々買っていた。ところがソフトウェアのコモディティ化によって商用プロダクトに頼らずとも多様なニーズに答えられるようになった。結果として一部にフィットしたプロダクトは、本当にその一部の人しか買わなくなってしまった。


リーチを長くして多様性への対応する
 これに対応するには多様性に立ち向かわなくてはいけない。プロダクトとして形を維持しながらも多様なニーズに対応できるという、これまでのプロダクトの概念とは違うものです。

 僕が前回指摘したのは、その多様性を支えるのが「リーチの長さ」です。つまり、高い拡張性を用意する事で、普通の企業に10%ぐらいはいるであろうレベル7,8ぐらいのエンジニアが手を出せようにしておく。こうする事で多様なニーズに答えるのです。

 ここでは、こうした多様性を備えたプロダクトとして(Javaよりで申し訳ないですが)DIコンテナ、Eclipseを考えてみて、さらに商用製品ということでsalesforce.comの取り組みに注目します。


DIコンテナ:組み込みコンポーネント
 考えてみれば商用のDIコンテナというのは存在しません。BEAはDIコンテナを開発する事なくWebLogci9でSpringをサポートしました。
 商用のDIコンテナが存在しないのは、コードがコンパクトで大して難しくないのと、プロダクトとして成立しにくいという特性です。

 DIコンテナというのはコンテナ単体ではソリューションとして意味がありません。SpringS2もDIコンテナを中心としたWebアプリケーション・フレームワークとして、たくさんの周辺コンポーネントを用意しています。ですから純粋なDIコンテナというのは組み込みとして使えます。例えばESB製品のServiceMixMuleはSpring上に構築されています。Springは、Webアプリケーション開発からミドルウェアまで幅広く使われているわけです。

 DIコンテナはただの組み込みコンポーネントに過ぎません。組み込みコンポーネントが多様性に答えるというのは、その特性上当たり前のことです。だからこそ、DIコンテナの導入に苦慮する(導入メリットが説明しにくい)、プロダクトが存在しないわけです。

 たぶん、DIコンテナは組み込みコンポーネント市場を生み出す大きな原動力になるはずです。セキュリティコンポーネントのAcegi SecurityはDIコンテナを前提とし、自身も組み込みコンポーネントです。こうしたプロダクトが増えてくるでしょう。

 2年前もですが梅田望夫・英語で読むITトレンド(お、なつかしいw)の今までのLinuxビジネスは革新的じゃないを思い出しました(今読むのが面白いデス)。Linuxをコンポーネントとして捉え、顧客専用にLinuxベースのOSを組みあげる(ソフトウェア界のDellモデル)という取り組み。

 組み込みコンポーネントをユーザーのために組み立てるというところにヒントを感じます。将来、DIコンテナを軸にこうしたビジネスが立ち上がる可能性を感じます(SpikeSourceとも、ちと違う)。


Eclipse:プラグイン機構
 Eclipseは、IBMが初期コードを提供した開発環境ツールです。現在では組織としても非営利企業として独立しています。
 Eclipseのコードは単純とはいえないかもしれませんが、そのプラグイン機構が非常にシンプルにできています。というか、Eclipse自身がプラグインの塊として構成されています。これは非常に斬新なアイデアで、プラグイン思想の1つの完成形といえるものです。このようにEclipseはプラグイン機構を用いて多様性を実現しています。

 僕もプラグインを開発した事がありますが難しいものではありません。多くのエンジニアがプラグイン機構を利用してプロダクトを作り上げています。例えばこことか。
 
 同時にEclipseを中心としたエコシステム(生態系)がうまく循環しています。

 IBMはWebSphere StudioやNotesをEclipse3.0のアーキテクチャ上に構築しています。これは商用プロダクトです。つまり、IBMはEclipse自体では一銭も儲けず、ただ成果を利用してエンタープライズアプリケーションを開発し、それを売っているのです。

 IBM自身が、一般のオープンソース開発者と同じような立場で参加しているというのが興味深いところです。


salesforse.com:アプリケーション市場
 最後はオープンソースではない商用製品です。salesforce.comはASP(オンデマンド)タイプのCRM製品です。そして9月に発表されたのがAppExchangeという取り組みです。ITMediaのsalesforce.com、オンデマンドアプリ交換サービス「AppExchange」発表によれば、

 企業情報をすべてオンデマンドで管理・共有するというsalesforce.comの構想に基づき、AppExchangeでは同社の顧客同士やパートナー、デベロッパーとの間で各種のアプリケーションを交換できる。

ということで、世界初のエンタープライズアプリケーションのユーティリティー企業を目指すSalesforceでは、

Appexchangeに対して、SalesforceはプラットホームとなるAppforceの提供に力を入れます。つまり、新たなアプリケーションを容易に構築するための、OS、データベース、既存アプリケーションとの統合のIntegration、アプリケーション開発のためのAPI、開発ツールにあたるbuilderです。

としています。この狙いは、満足せる豚。眠たげなポチ。さんがMarc Benioffが作るビジネスアプリケーションのiTunes Music Storeとは?で指摘されているとおり、

Marc BenioffがSummer '05のバージョンアップでSalesforce.comはThe Long Tailを吸収するサービスとなると言っていた。

「ビジネスアプリケーションには様々な要求があり、それらがロングテールを形成している。Salesforce.comはsforceと multiforceによる柔軟なアプリケーション提供方式を準備することで、このロングテールを一々拾い上げられるようになる。」という主旨の話だった。(略)

このAppExchangeはまさに彼が言ったロングテールを拾い上げるための仕組みだろう。

ということです。(ロングテール論。尻尾の売り上げが50%というのは、その後修正されています

 僕はAppExchangeを触った事がある訳ではないのですが、プラットフォームを提供するだけでなく、開発されたアプリケーションの流通市場を構築するというアイデアは非常に興味を引かれます。ただし、Eclipseと違ってオープンソースでも無償でもないという根本的な問題があります。本当にロングテールの解決になるのか注目されるところです。


ユーザーを競争相手にするか、開発者にするか
 DIコンテナ:組み込みコンポーネント、Eclipse:プラグイン機構、Slaesforce.com:アプリケーション市場という3つの事象を見てみました。DIコンテナとEclipseは「多様になれるプロダクト」であり、これまでのプロダクトという概念では語れないでしょう(売りにくいとも言うw)。

 一方、コモディティ化によって企業はジレンマを抱えています。コモディティ化の波を受けない高級な製品を作れば売れなくなり(EJB)、かといってまともにコモディティ化の波を受ける製品を作る訳にはいかない(DIコンテナ)。しかも、高級な製品をオープンソースにしたところでオープンになるわけではない(いまのところ成功者はEclipseのみ)。

 イノベーターのジレンマよりも難しいでしょう。コモディティ化で競争相手となるのは、実はユーザーでもあるコミュニィティなのです。彼らに人気を得るためには儲けられず、儲けようとすれば人気が出ない。

 であれば、彼らのための土俵を提供し、彼ら自身に開発をしてもらうという戦略は正しいと感じます。つまり、プロダクトベンダーに取って、ユーザーとは、

 昔: プロダクトを使う人
 今: プロダクトの競争相手
 未来: 一緒にプロダクトを作る開発者

となっていると考えられるわけです。

 さらに開発されたものが流通する事で健全なエコシステムが作り上げられます。EclipseやSpringは自然発生していますが、商用製品であるsalesforce.comの"意図的に流通市場を作り出す"という取り組みは面白いです。


オープン性を実現する手段は様々
 プロダクトのオープン性を実現する手段は様々でしょう。このエントリで取り上げたのはほんの一部だと思います。注意すべきなのはオープンソースにするだけではオープンにはならないということです。プロダクトのオープン性とは"ユーザーを開発者にすることである"と言ってもいい気がします。

 で、きれいにまとまって結論なしですw)。僕の結論は、うーん、もぞもぞ考えます...

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OSSからGoogleまでつながるモノがあったので、エントリします。  まず、yusukeさんのエントリ【プロダクトのオープン性。ユーザーを競争相手から開発者に】に、ヒントが有りました。yuusukeさんの考えていることは、私と極めて近いようで、ちょくちょく拝見しており`.. [詳しくはこちら]

コメント (3)

 いつも、面白いエントリを読ませて頂いております。さて、今回は、トラバに失敗するので、コメントにて足跡を残しておきました。よろしくお願いします。

はじめまして。最近Blogを読ませていただいています。

 金儲けにならないから土台を作って他の人に作ってもらうっていうのも(あってます?)ひとつの戦略ですね。
おっしゃるとおりベンダー製品が売れなくなっているのは現場にいて感じます。
売っててもたいしたことできないのになんでこんなに高いんだと思うことが多いですからね。

 MicrosoftはWindowsという独占的なエコシステムを構築して多くのソフトウェア会社にソフトウェアを作らせることに成功しました。
しかしこれからはそのような企業は出てこないでしょうね。
未来のプラットフォームではオープン性が求められると思います。

 ITシステムもコモディティ化して顧客にとっての本当の価値を提供できるかというところが問われるようになってきたのではないでしょうか。
ITは単なるツールですからね。
単なる目新しさではなくそれを使ってどういう価値が生み出されるかを訴えていかないと顧客はお金を払ってくれないと思います。

Anthonyさん、コメントありがとうございます。
いわれる通り価値は顧客が決めるものです。だから顧客自身が、価値を認められるものを自分で作れば良いという発想ともいえますね。
ただ対価として与えられるものがお金だけだと考えていると、どうしても儲かるという話にはならないはずです。たぶん経済概念そのものがかわるのではないかと思います。
これからもよろしくです。

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2005年09月26日 15:00に投稿されたエントリーのページです。

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