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SOAとWeb2.0

 最近、僕の周りでもSOAについての議論が多くなってきた。いよいよ本格的にSOAを使ったアプリケーション構築が始まろうとしている。そんなときに感じてしまうのが、Web2.0の議論に比べた場合のSOAに関する議論のレベルの低さだ。

Web 2.0
 ご存知の通りWeb2.0はWebの次のあり方として注目されている概念だ。Web2.0のコンセプトはシェアと再構成だろう(Remixでも、Rewritableでもなんでもいい)。わかりやすい例ではGoogle Mapsはてなマップがあげられる。Google Mapsの情報を利用して、はてなでは、その上に日記や写真を載せることが出来る。はてなマップはGoogle Mapsの延長上にあるが、地理的コミュニティという新しい価値を提供している。

 オープンなAPIでは、「オープンソースにすることよりも、使いやすいオープンなAPIを用意することが重要」と書いた。宮川さんのエントリ(Amazon and Open Source (and Open Data))経由で知った、Six Apart BenさんのOpen Dataでは、

Exactly. In some sense, open data is more important than open source. Your data is more valuable than the tools you use--you can always find new tools, but if you lose access to your data, no tool in the world will give you access to it.

 その通り。わかるよ、オープンなデータは、オープン・ソースよりも重要だよね。データはツールよりも価値がある -- 新しいツールはどんどん出てくる。でも、データへアクセス方法を用意しないなら、世界中のどんなツールでもデータにはアクセスでないんだ。(Benさんの口調はあくまでも想像です)

とある。うん、オープン・データという表現が本質的で良い言葉。でも、Raw Data(生データ)だけでは混乱してしまう。そこに糸口をつけるのがAPIの役割だ。だからセンスの良い切り口(=API)というのも実はポイントだと思う。

 そして、そうしたオープン・データを集めて再構成するのがWeb2.0の真髄だろう。梅田さんのWeb 2.0、Remix、Mash-upsを再引用すれば、

Web 2.0の世界とは、この文章中にあらわれる「Remix」という言葉や「Mash-ups」という言葉に象徴されるように、ウェブ上に存在する無数の無関係なサイトのデータやサービスを、誰もが自由に組み合わせて新しいサービスを増殖させていくことができる世界なのである。
 

SOA
 一方、SOAはどうだろうか。基本的な技術はWebサービスとしてかなり確立されており、Web2.0とさして変わるわけではない。しかし、その議論のレベルの低いことといったら。多くのベンダーがSOA対応製品を出荷し、それを使えばSOAが実現できるとメッセージを送っている。ところが、その実体はどうだろうか。ほとんどがEAIの延長線上で語られているに過ぎない。EAIはデータ流通の効率化に過ぎない。できることはコストの削減であって、イノベーティブな価値を生むことでない。

 SOAをWeb2.0のように、シェアと再構成という文脈で考えればいろいろなアイデアが浮かぶ。Web2.0のオープン・データのコンセプトを企業内で行えばどうなるのだろうか?SOAの元々のコンセプトは、APIを公開しレポジトリを通じて様々なサービスを提供することにある。なぜ、こんなにもWeb2.0と乖離しているのだろうか。SOAがイノベーティブな価値を生み出す可能性をもっと語るべきではないだろうか。

 SOAはアプリケーション・アーキテクチャ2.0なのだ。ていうか、それをめざしていくべきなのだ。もちろん、パフォーマンス、セキュリティなどなど問題は山積みである。そんなことはわかっている。でも、理想がなければ前には進めない。


 ぜひ、今時点で氾濫しているSOAという言葉に惑わされないで欲しい。SOAはそんなもんじゃない。きっと、あなたのアプリケーションにも適用できて、わくわくして楽しいものなんだ。

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コメント (7)

byechu:

現時点でのSOAは、ある意味、IT戦略教育みたいな色あいがあるように思います。つまりベンダーから見たターゲット市場が、ITをアウトソースした挙句に動きが緩慢になった企業向け。Web2.0は「コアバリューを公開する」ことに怖気づかない若い企業が進めているわけで(もちろん実行スキルは自社内に確保してるのでしょう)。

この温度差は「ベンダー主導かユーザー主導か」の一言につきると思います。yusukeさんの締めの一言と同じですね。

yusukeです。
なるほど"IT戦略教育"ですか。SOAを"前に進むための道具"と定義するよりも、"遅れないための道具"とした方が市場規模が大きいということなんでしょうかね。
SOAとWeb2.0との違いが「ベンダー主導かユーザー主導か」というのはおっしゃるとおりですね。

byechu:

>>"遅れないための道具"とした方が市場規模が大きい

そこまで言い切っていいかどうか・・・w。
まずはリソース整理、体制作り、というフェーズなのではないでしょうか。

yusukeさんの記事を拝読して、ガートナーがちょっと面白いことを言ってたのを思い出しました。「マルチチャネルのサービスを作ることから始めなさい。そこからSOAが広がっていくはずだ。(テキトーに略)」
これって、Web2.0の世界観に誘導しているようにも聞こえませんか?

yusukeです。おっと"マルチチャネルのサービス"とは、どういう意味ですか?アプリケーションとしてのサービスと多目的(?)に流用できるように作りなさいということでしょうか?それとも、ビジネス上の同一サービスをマルチチャネル(流通)に実施しなさいということでしょうか?
マルチチャネルもサービスも、ビジネス用語でもあり、システム用語でもあり、難しいですw

yusukeです。

> WSのビジネス利用がWeb2.0でアーキテクチャ利用がSOA、

むしろ逆かもしれないですね。Google MapsのようなWeb2.0には明確な儲ける構図が見えるわけではないので。そうするとAmazonはSOAになっちゃうかもしれないですがw。
ここら辺の混乱がWeb2.0の面白いところですね。

maruyama:

丸山です。

鈴木さんのblog初訪問と、少し時間があってweb2.0を調べ始めたのとが、偶然、重なりました。

僕は、web2.0の議論のレベルが高くてSOAの議論のレベルが低いという議論には、賛成できません。

SOAの位置づけをめぐる議論には、基本的には2つの大きな源があります。

第一の源は、20世紀の一番終わり頃の、「ネットワークがサービスを担う」と、はじめて喝破した、Jiniコミュニティの議論です。
http://www.jini.org/meetings/first/
http://www.jini.org/meetings/second/

特に、Jini Community Summit でのRichard Gabrielの基調講演は、いろんな論点が含まれていて、当時は、とても刺激的なものでした。
http://www.jini.org/meetings/first/gabriel.pdf
また、David Coronaのプレゼンも、当時流行のブランド理論に基づいた斬新なものでした。
http://www.jini.org/meetings/first/coronna.pdf

SOAの位置づけについての議論の大きな源の二つ目は、第一の議論の後に、21世紀に入ってから生まれます。
それは、Ian FosterらのGridの考え方です。

まず、2001年の論文、The Anatomy of the Grid
http://www.globus.org/alliance/publications/papers/anatomy.pdf
で、ネットワーク上のサービスの担い手として、Virtual Organizationという概念にたどり着きます。

続いて、The Physiology of the Gridで、SOAの考え方でGridシステムを構築するというアイデアを、Open Grid Services Architectureとして提案します。現在のSOAは、このOGSAの考え方の影響の下にあるといってもいいと思います。

一方web2.0ですが、時期的には、ちょうどGridのハイポの後で生まれているようです。昨日読んだ、web2.0 Conference 2004のコンテンツを、JiniやGridのテキストと比べるのは面白いことです。 http://conferences.oreillynet.com/pub/w/32/presentations.html

夢見る詩人Dickの高踏主義は、Andrew Conruのプレゼンと対比出来ます。
What Can We Learn from the Adult Industry?http://conferences.oreillynet.com/presentations/web2con/conru_final.ppt
このスライドの6ページにある様に、アダルトサイトFriendFinder Network一つで、Googleの6割にあたる規模のアクセスを稼いでいるというのは驚きです。

秀才Ianの科学主義には、Bill Gurleyのプレゼンを対比すればいいでしょう。
The Breakout Business of MMORPG
(Massive Multiplayer Online Role Playing Game)
http://conferences.oreillynet.com/presentations/web2con/bill_gurley.ppt
個人的には、FFが取り上げられていないのが不満でしたが。

これらを対比すると、よく分かるのは、問題なのは議論のレベルの高い低いではなく、まったく別のものを見ているということです。

また、次のような違いもあるように思います。
SOAは、サービスの生産とそのシステムを主な関心とし、web2.0は、web上のサービスの消費に関心があると。

もっとも、今回紹介したSOAの議論は、少々、賞味期限が切れかかっています。
今から振り返れば、Jiniコミュニティがブランド理論に飛びついたのは、それが、SCSLの形式に適合的だったからに他ならないということがよく分かります。

Jini/SCSLの理想主義者だった、Richard GabirielもKen ArnoldもBlackdownの事件では、現実からしっぺがえしを食らいます。それは、Bill Joyも一緒でしょう。

OGSAの理想も、OGSIからWSRFへの路線変更に伴うポリティカルな争いで、何かを失ったのは確かでしょう。

忘れてた。web2.0 Conferenceでは、Jim Spohrerがサービスの歴史に興味を持った展開をしていて面白かったです。http://conferences.oreillynet.com/presentations/web2con/jim_spohrer.ppt
ただこのスライドの7ページを、よく見れば、世界で一番サービス化が進んでいるのは、アメリカよりは日本だということが分かります。

日本、がんばらないと。

yusukeです。丸山先生コメントありがとうございます。資料を読んでいると返事が遅くなりそうなので、とりあえず読まずにコメントしますw。

エンジニアレベルで、SOAとWeb2.0の議論に高低がないのはご指摘どおりです。しかし、ユーザーである一般人を考えると歴然と感じます。Web2.0では多くの人が質の高い議論を展開しており、一方SOAについてはそうでない(Web2.0とBlogのユーザー層がかぶっているから、議論が見えやすいというものあるでしょうが)。

> SOAは、サービスの生産とそのシステムを主な関心とし、web2.0は、web上のサービスの消費に関心があると。

なるほど。SOAにもWeb2.0にも両面あるかと思います。僕はSOAの「消費」が語られる、つまりユーザーが「SOAって、こう使えるじゃん」と語ることで、はじめてSOAが使える技術になると思います(これは、どんな技術においてでもでしょうが)。
ユーザー議論のレベルで、SOAがWeb2.0に追いつくと、また違った観点でSOAの可能性が広がるのではないでしょうか。

> 日本、がんばらないと。

その通りですね。サービスの質を考えれば、圧倒的に日本ですからね!

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2005年08月13日 23:50に投稿されたエントリーのページです。

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