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環境心理学をシステム開発に応用できるか

先日、とあるきっかけで建築系のバックグラウンドを持つ方と知り合った。この方はシステム開発のPMもしており建築とシステム開発が似ているという話で盛り上がる中、建築業界で使われている手法がシステム開発にも役立つのではないかというものをいくつか聞くことが出来た。その中で興味を引いたのが環境心理学による要求分析というものだ。

環境心理学とは
環境心理調査手法入門」という本によると、環境心理学(Environmental Psychology)とは、

一言でいえば「環境と人間の心との相互作用を取り扱う学問領域」と定義され、建築学だけではなく、心理学や社会学にもまたがる学際的な学問領域である。

「人間は環境をどのような形で理解するのか、また逆に、環境はどのような形でどんな影響を人間に及ぼすのかを明らかにすることで、より良い環境形成を支援することを目的とした学問領域」程度に考えていただければ十分であろう。

とある。
例えば「落ち着く部屋が良い」という言葉があったとき、人によってはダークトーンの部屋が良かったり、大きな窓の明るい部屋が良かったり、実際の環境は大きく異なる。つまり環境をどう評価するかというのは人間の心の中にあるわけだ。
環境心理調査とは、この前提を元に人が表現した環境への抽象的なリクエストを具体的なものに落とし込みを行ったり、完成した環境に対して人どう感じているかを分析する。この結果を建築の様々なシーンに役立てるのだ。

評価グリッド法
その中でも興味を引いたのは評価グリッド法と呼ばれる手法だ。これは、

パーソナル・コンストラクト理論、すなわち「人間は認知構造と呼ばれる各人に固有の理解・判断の仕組みをもっており、目や耳などの感覚器を通じて得た外界からの情報を、この仕組みによって情報処理することで、環境を理解し、どんな行動を取るべきか決定し、さらにその結果を予測しようと努めている」という人間モデルを前提としている。

「窓が大きい - 小さい」「天井が高い - 低い」という客観的かつ具体的な理解の単位を下位に、「開放感がある - ない」といった感覚的理解を中位に、さらに「快適な生活が送れる - 送れない」といったより抽象的な価値判断を上位に持つ、階層的な構造

評価グリッド法の最大の特徴は、回答者にさまざまな環境を提示し、これらを比較しどちららが好ましいかを判断させ、その評価判断の理由を尋ねるという形式で、評価項目を回答者自身の言葉によって抽出する点にある。

具体的には2,30枚の写真を、2枚づつ見せながら評価をしてもらうことで、具体的な要素と感覚的な要素を階層をこえてリンクさせるわけだ。これで、より的確に、その人の考える快適さを取り出すことが出来る。

さらにラダーリングという手法によって、リンクする要素を誘導して見つける手法も存在する。ラダーアップは上位概念の誘導「○○が良いのはどんな理由か」、ラダーダウンは下位概念の誘導「○○が良いというのは、具体的にはどうなっていることか」をしめす。
ちなみにラダーリング法はマーケティング調査にも用いられており、具体的な商品からラダーアップによって根本的な価値観の探索を行うために使われているそうだ。


システム開発への応用
評価グリッドのポイントは、「快適さ」というような抽象的なものを「窓が大きいこと」などという設計可能な具体要素に落とし込むことだ。システム開発でも同じような行為が必要だろう。いわゆる業務分析である。

(なお、注意しなくてはいけないのは、単なる見た目のユーザービリティ評価に落ち込まないことであろう。確かに快適さを実現するためにカラーリングやボタン配置は重要な要素である。ただ、家で言えば家具の配置のような問題であり、構造に関わるようなことではない。取り出すべきなのは、窓の大きさのように構造に織り込まれるような要素である。)

しかし、そのまま適用できるというものでもないだろう。
システム開発の場合、具体的な機能を比較評価してもらうことが難しい。まず、建築と異なり、視覚化が難しい。それに、静的な要素というよりも、インタラクティブな要素を備えている。そもそも専門性が強すぎて評価が難しい。例えばWebアプリケーションの選定でStrutsとTapestoryがいいですかなどという質問にはまったく意味がない。これが理解できる顧客はまずいないだろうからだ。

ただ、環境心理学が前提としている環境と人間の認知モデルはなにか良いヒントになる気がする。システムが人間にどう認知されるべきか、どういう影響を与えるのか。

で、この数日考えているのだが、うまいアイデアが浮かばない。なので、中途半端なままとりあえずエントリするw。むー。だれか良いアイデアが浮かんだら教えて欲しい。
なお、本には、一般的な統計手法も紹介されている。グリッド評価だけでなく、いろいろな調査手法を網羅的に知ることが出来る。


4765524442よりよい環境創造のための環境心理調査手法入門
日本建築学会


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コメント (2)

HgCdTe:

快適さを感じるシステムとは、で思いつくのは、

Palmの Zen of Palmの考え方です。具体的には、
使う人の手順を考えて、ボタンの押す回数やペン
ストロークを最低限にする。使う人に歩み寄って
もらい、CPUパワーの低減(ひいては、長時間動作を
可能にする)を図ったGraffitiなど。

最近では、P2Pや高音質で話題の Skypeのユーザー
インタフェースの秀逸さです。同じ機能なのですが、
使い勝手がまったく異なる感じです。

そういえば、昔のHP(今、アジレント)が作っていた
測定器のインタフェースも感心したことしきりでした。

いずれも、機能を実装する人が、使う人のコトを
頭の中に正しくイメージしているからだと思います。
間違った(独りよがりな)イメージでは、この様には
いかないと思います。

yusukeです。HgCdTeさんコメントありがとうございます。
たしかにハードウェアの世界は、そこが死活問題になりますからね。僕はIDEO(http://www.ideo.com/)なんかが浮かびます。
一方、ソフトウェアは見えないし、クレイモデルを作りようもないし、大量生産でもない。1つ1つのアプリケーションで「使う人のコトを頭の中に正しくイメージして」いくためには何が必要か。難しいですねぇ。

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2005年06月18日 23:30に投稿されたエントリーのページです。

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