Deep Smarts
Harvard Business Review(日本語版:2005年2月)に「ディープ・スマート:暗黙知の継承」という記事があった(この号は、企業同士の買収や提携の話が中心なので、巻末にちょこっと載っているだけです)。"Deep Smarts"は、日本語にすれば暗黙知となるが、もう少し正確に表現すれば、形式知と暗黙知を含めた総合的な知識を用いて、ある状況に対して判断を導き出す力のことである。この記事では、
技術やマネージメントに関して鋭い直観力を持ち合わせている人は、今回のケースが過去に起こった経験に当てはまるかどうかを素早く判断できる。彼らはまた、常に意識しているわけではないが、ばらばらな要素を1つの意味をなす全体に首尾よく組み立てる能力に長けている。さらに、経験の浅い人間が気づかない動向や異常についても特定できる。
と説明している。
そして、Deep Smatrsを得るために必要なのは経験だ。特に"指導の下での経験"によって継承が可能だとしており、理解の推移モデルを以下のように定義している。下に行くほど能動的な学習となっていく。
(※ソクラテス問答とは、相手に対して「どうしたらわかる?」「そうするとどうなるの?」などというように対話してあげることで、反省や能動的な学習を促すというやりかた。"無知の知"とも言われる。コーチングとかでは一般的な話ですかね)
- 「Rules of Thumb(経験則)」
- 「Stories with a Moral(談話)」
- 「Socratic Questioning(ソクラテス問答のような質問)」
- 「Guided Pracite(指導の下での実践)」
- 「Guided Observation(指導の下での観察)」
- 「Guided Problem Solving(指導の下での問題解決)」
- 「Guided Experimentation(指導の下での実験)」
つまり、Deep Smartsの本質は、能動的に学習する方法を会得することにあるといってもよいと思う。結局、まったく経験のないことは分かりようがないわけだから、どうしようもない。しかし、常に前に進むというマインドセットがあれば、いろいろな総合的な知識が得られ、応用範囲が広がるのは確かだ。トヨタ生産方式の本質は、かんばん方式やJIT(ジャスト・イン・タイム)という形式ではなく、常に"カイゼン"を求めて実験を繰り返すというマインドセットにあることは有名だろう。
なお、日本ではこうした手法はOJT(オン・ジョブ・トレーニング)として知られている(効果や実践方法は疑問視されているが)。
ソフトウェア業界のDeep Smartsとは
で、何を感じたかというとソフトウェア業界におけるDeep Smartsは、どうなっているのかということだ。
まず、ソフトウェア業界ほど、能動的学習を手に入れる効果が高い業界はないのではないかと思う。それは、インターネットへの親和性である。ソフトウェアは、すべからくデジタイズできる。たとえば、オープンソースは、その最たるものである。オープンソースを読めば、多くのトップレベルエンジニアの考え方を形式的な形で取り込むことができる。なお、インターネットによる学習効果の促進は、梅田さんが広めたインターネット高速道路論が良いだろう。
ところが、全員が高速道路を走っているかというと、そういうわけでもない。むしろ、かなり多くの人が高速道路への乗り方が分からないのではないかという危惧をいだいている。僕自身、昔からの日本企業に勤めた経験があるのだが、インターネットを通じて知識を増やしているという人は、かなり限られていたように思う。しかも、オープンソースによって知識を得ていたとなると、僕自身もできていなかった。
一方、アジャイル論者の中でも、トヨタの"カイゼン"というのは注目されていて、たとえば、"リーンソフトウェア開発"には無駄を省くという内容で引用されている。XPで言えば、リファクタリング/ユニットテストなどのテクニックとともに、ペアプログラミングのような"指導の下での実践"の必要性も指摘している。
日本では、OJTのような学習形態はあるものの、それは能動的学習を手に入れるといった目的で実践されているように感じない。そもそも、こういった能動的学習については「その人の素養」というような切り分けであり、身につけさせるといった話を余り聞かない(というか、僕自身もそのような考え方を持っている…ま、中途採用の場合は身につけておいて欲しいスキルではある)。ただ、最近はコーチングなどの手法が大事だとされており、こうした考えが一般的になってきてはいるようだ。
まとめ?
またも、まとまりがないのだが"能動的学習方法の習得"について、僕に何ができるのかと。Blogや雑誌には書けるけど、とはいえ、それすら読まない人には伝えようもなく。せめて、体系的な知識をまとめて、能動的学習を始めた人をエンハンス(さらに高める)できるようなことをするということかなぁ。
ところで、僕自身の学習法。まず、ソフトウェア業界は、学ぶべきことが多すぎで、すべてに手を出していると、ビジネスに対する総合知識を仕入れる時間はなくなってしまう。そこで、Know Who(誰が何を知っているかを知っている)のほうが大事だったりする。僕の場合は恵まれていて、優れたマインドセットを文化とするシステム開発会社とお付き合いがあるので、ソフトウェア的な詳細はおまかせしている。その代わり、僕のほうでは周辺知識を仕入れたり、あるいは教わった詳細を体系化して記述するということをしている(つもり)。
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コメント (3)
Uです。
わたしゃもyusukeさんのおっしゃっているKnowHowと同じ意見です。ソースを管理するのではなく、ソースのありかを管理するような感じでしょうか。
1つ質問があります。今までで特に役に立ったコーチングの書籍などご存知でしょうか?
先日「Uさんはコーチングがうまいですね」とある経営者から言われたのですが、コーチング自体意識していなかったので、戸惑いました。
勿論ネットを活用して調べますが、現時点でyusukeさんが公開できる書籍があれば教えてください。
メールでもわたしゃは構いません。
失礼致します。
投稿者: U | 2005年01月17日 20:11
日時: 2005年01月17日 20:11
arclamp.jpのyusukeです。
>現時点でyusukeさんが公開できる書籍があれば教えてください。
書いておいてなんですが、体系的にコーチングを学んだことはないので、「これ!」といえるような本は、残念ながら知りません。お役に立てず、申し訳ないです。
投稿者: yusuke | 2005年01月18日 11:45
日時: 2005年01月18日 11:45
コメントありがとうございます。
了解しました。
投稿者: U | 2005年01月18日 13:09
日時: 2005年01月18日 13:09