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マーケティングとブログ

古澤さんのSAPインサイト by Furusawa[SDN]「ドラえもん好きの紳士」からの追伸 にバイラル・マーケティング とはなんぞや?というエントリがあったので、

arclamp.jpのyusukeです。”ウィルスのように広がる”という意味で、日本語訳は口コミマーケですね。Yahooのダイレクトマーケティング副社長を務めたセス・ゴーディンが広めたのだと思います。邦訳は、http: //www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4798100056。 他にも、トライバルマーケティングという言い方もします。

とコメントしたところ、dokonodareoさんより、

原著にあたらぬままで恐縮ですが、viral marketing と tribal marketing は同等という理解で宜しいでしょうか。

両者blogを媒介として..というのであれば、後は、語感からだけなのですが、二者で視点が少し違っていて

前者は、一見さんレベルからファンを経て宣教者へと変質させそこからの『感染』を促す-という顧客の取り込みをインターネット媒介で行うにあたり、その接触点たるメディアの一つがブログであろうという話から始まるもの。後者は、この記事でのご説明から推測するに、segmented marketing のセグメントの選択・獲得・形成促進のための情報媒体の一つがブログである。

という主張だという感じで理解で良いでしょうか。

とのコメントをいただく。む、確かに。単に同じというのは言い過ぎかも。そこで、もうすこし詳しく書いておく。なお、僕はマーケッターではなく、ソフトウェアエンジニアだ。興味は、インターネットによってマーケティングがどう変わったのか、どう変わるべきなのか、そして、そのときにソフトウェアになにができるのか、ということである。


One2Oneの限界
インターネットの登場時期、インターネットはマスメディアの代替として"消費者へ個別にアプローチするためのメディア"と捉えられた。そこで、ジオグラフィックかデモグラフィックの関わらず、ともかく個人の属性を収集して分析し、その属性にあった商品を紹介すればよいという考え方が生まれた。いわゆるOne2Oneである。

この考え方は、間違っていない場合もあるだろうが、労力の割りに報われにくい。これは、3つの問題があると考える。

1.属性は常に変化する
2.属性の基準が判断しにくい
3.商品と属性の関連性を設定しきれない

たとえば、「毎週読む雑誌」というデモグラフィクな属性があったとしよう。その場合、1.今、現在も読んでいるのか? 2.この雑誌が読むなら、こういう人という割り切りは正しいのか? という問題である。そして、属性が数十に及ぶ場合に、3.属性と商品の割り当てをするのが人間業でないということになる。
1,2については、言わずもがなという感じであろう。3については、システムでサポートするという考えもあるが、どうしても変なレコメンドになる場合が多い。なお、Amazonのレコメンドは、購買した本という、きわめて明確な属性による指標なのでズレが少ないだけである。

このような問題があるため、One2Oneでは、メンテナンスされてない不必要な属性ばかりが増えてしまい、分析の意味を成さなくなることがある。だからといって、そのとき必要な属性だけに絞るのも現実には難しい(曰く『もし、来週必要になったらどうするんですか!』)。


インターネットによるコミュニティの出現
最初にも述べたが、One2Oneは、インターネットを"個別のマスメディア"と考えてしまったわけだが、実際には"複方向のメディア"である。その結果、インターネットで生まれたのが、地理や時間を越えた"関心によるコミュニティ"だ。

こうしたコミュニティは、ある関心によって構成されているため、コミュニティ自体の属性が変化することが少ない。しかも、個人ではなく、"関心"そのものを相手にできる。むしろ、個人の入れ替わりは良い循環であり、コミュニティの健全な発展を促す。

こうしたコミュニティで、このコミュニティに則した良い製品があるという話が広まれば、自然に購買が発生する。これが、いわゆる口コミである。

口コミは、消費者同士の情報交換ため効果が高い。しかし、口コミは、消費者主導のため、企業が直接コントロールできるものではない。


ゴンゾー、バイラル、トライバル
で、ゴンゾーマーケティング、バイラルマーケティング、トライバルマーケティングといったものが、実は同じことが目的であることが分かる。つまり、直接触ることのできないコミュニティでの広まりを、いかに企業がコントロールするべきか/できるのか?ということだ(こういう視点では、現在の流行のマーケティング手法というのは、まず同じだといってよい)。

ゴンゾーマーケティングでは、「企業の顔をせずに、コミュニティの中に飛び込め」、バイラルマーケティングは「口コミを助長する仕組みを入れろ」、トライバルマーケティングでは「社会性という視点からアプローチしろ」といっている。

なお、ゴードウィン氏が提唱したバイラルマーケティングには批判もある。消費者への最初のアプローチは従来のマスマーケティングに頼らざるを得ない点と、口コミを醸成するための施策が押し付けとしてコミュニティの反感を買うことがある点だ。
極端な例としては、「梅田望夫・英語で読むITトレンド」でゲストブロガーの村上さんが書かれた「企業マーケティングにおけるブログの可能性」にあるワーナーがあげられる。意図的に消費者のフリをして口コミを発生させようとしてしまい、大批判をあびてしまった。口コミを直接コントロールしてはいけないという例だ。

なにせよ、企業がコントロールしようとすればするほど消費者は逃げ、とはいえ何もしなければ、なにもおきないという、"マーケッターのジレンマ"みたいな状態であることはたしかである。


インターネット自体のマーケティングにおけるシステムの役割
エンジニアとして面白いと思うのは、インターネットのコミュニティへのアプローチには、システムが必須でありながらも、プラットフォーム作りという裏方的な仕掛け作りに過ぎないということだ。

いくつか例を挙げていこう。

MTやはてなのようなブログツールにせよ、Orkut、Mixi、GreeのようなSNS(ソーシャルネットワークサイト)は、そのもの自体はコミュニティのプラットフォームにすぎない。ブログの場合は、トラックバックによる広がり、SNSの場合は、人のつながりの視覚化することで、面白さを増幅させている。

Googleのアドワーズやアフィリエイトも、企業側がお金を払う仕組みではあるものの、いつ出るかをコントロールできるものではない。Googleは、アドワーズを、「その情報を探している人にとっては、広告が有益な情報となりえる」というスタンスでいる。これこそ、マーケティングの本質(欲しい人に、欲しい情報をあげる)であろう。

そして、今回発表されたデジタルガレージとテクノラテの統合についても、プレスリリースを読むと、

TRの技術はとても高速な検索を実現しており、ブログを更新してから検索対象になるまで通常数日から数週間かかる検索エンジンに対し、ブログへ書き込んでから数分でその更新を検索対象にできることが特徴です。このTRが強みとする検索の速さにより、多くのユーザーがブログを中心にした、リアルタイムの情報コンテンツの入手を可能にしています。

というように、ユーザーが情報を収集することを助けていることが分かる。たぶん、Googleのアドワーズと同じように、検索結果に広告を掲載するというのが、直近の収益モデルだろう。


ブログとテクノラテ
では、新ためてブログにフォーカスしてみよう。

ブログを書いている人間としては、1つのブログが複数のコミュニティ(=関心)に所属している点が面白い。GoodPic.comのブログ+RSSリーダーと、検索エンジン。情報を探す導線設計の違いと補完関係が分かりやすかったのだが、

まず個々のブログは、それぞれ幾つかのテーマを持っています。例えばこのGoodpicブログだと「ネット技術、サーフィン、海の写真、湘南地方」などいくつかのテーマに関連した記事が集まって、一つのブログとして成立しています。一方で、他のあるブログは「ネット技術、音楽、ラーメン」を主にテーマとしている場合、この二つのブログは「ネット技術」という意味合い( Context )でリンクしているといえます。

この「意味的なつながり( Context )」といわれているのは、非常に緩いコミュニティにあたるものだと考えてもよいだろう。そして、

そういった様々なContextを、RSSリーダーや、SNSでつながっている人のブログの更新情報を表示できる機能や、メタタグを利用してFlickrやdel.icio.usのようにシェアすることで、情報を入手するのが最近トレンドの導線設計かなと。

としている。これまでの話であえて触れていなかった「では、コミュニティって、どうやってみつけるのよ?」という答えがここにある気がする。つまり、こうしたブログのつながりを追ってみることで、コミュニティの概観をつかめるかもしれないのだ。

そして、そこを目指しているのが、テクノラテではないだろうか。ただし、コンテキストを含まないキーワードマッチだけでは難しいだろう。テクノラテの技術を詳しく見ていないのだが、コンテキストはもとより、トラックバックなども考慮して検索できれば、面白いかなと思う。


まとめ
ブログは、はっきりいってシンプルなシステムだ。MovableTypeがいくらすごいとはいえ、Ben Trott氏がほとんど一人で作ったものだ(2年かかったけど)。だから、システム的なすごさは、あまりない。むしろ、こういったシンプルな仕組みで、ここまでできてしまうことが驚きなのだ。こういうものを作りたいと思うわけですよ。

2004/12/26追記:テクノラテのついて、渡辺聡・情報化社会の航海図よりTechnorati Japan始動に詳しい。

サーチというよりは、トラッキングというような情報感覚が近い。特定の話題や記事について、どのようなやり取りがされているのかを簡単に抜き出せるのがTechnoratiの面白いところである。

だそうである。

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コメント (4)

非常に深い議論の流れでTrackBackしていただいて、ありがとうございます。Goodpicの金子です。

個人的にも、ブログというシンプルなシステムが、「一人の人間が考えていること」という複雑な情報を、HTMLでアウトプットすることを可能にしている、という点に惹かれます。(ナイフのように)シンプルな道具は、それゆえに色々とイノベーションを創発できるのかもしれませんね~

arclamp.jpのyusukeです。金子さん、コメントありがとうございます。確かに、ブログは、主体からの"思想のデジタイズ"とでもいうべきものかもしれません。まだまだ面白いことがおきる気がします。これからも、よろしくです。

dokonodareo:

yusuke様

 詳説ありがとうございます。中身が結構みっちり詰まってますね。それでいて散らることなく美しくまとまっている。まずはお礼方々賛辞述べる次第です。

 ソフトウェアエンジニアだという足場とマーケティングに関する興味の向きも承知いたしました。

 以下、自分のサイトへつなげます。

※yusuke追記(つなぎ先を追加しました): http://d.hatena.ne.jp/dokonodareo/20041227

U:

おはようございます。
わたしゃには難しい内容ですが、常日頃ブログやSNS(わたしゃはGREEに参加しています)の可能性とかに興味がありました。特に得体の知れないSNSです。

> GreeのようなSNSは、そのもの自体はコミュニティのプラットフォームにすぎない。ブログの場合は、トラックバックによる広がり、SNSの場合は、人のつながりの視覚化することで、面白さを増幅させている。

なるほどって思いました。こういう捉え方があるんだと。
毎回勉強になります。

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2004年12月26日 01:09に投稿されたエントリーのページです。

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