イノベーターのジレンマとは
簡単に言えば「自分の知っている手法、顧客は持続的イノベーションのためであり、それを追求し続けても、破壊的イノベーションに対応できない」ということだろう。
持続的イノベーションとは、製品の性能を高めていくというプロセスだ。これまでの経営手法を用いて、既存顧客や、より高い性能を求める上位顧客に売っていく。そこでは、顧客の要求にしたがって費用対性能を高めていく。そんな経営として当たり前の考え方だ。
一方で破壊的イノベーションは、性能を高めることにつながらない。しばしば、単純で取るに足らないものだ。
筆者は、いまやHPに組み込まれたDECを例に出している。DECはミニコン市場で大いに成長したが、ミニコンよりも性能が劣るパソコンに足をすくわれた。そこで、誰もが思うだろう。「それは手法も顧客層も違うし、パソコンのニーズは自明の理だった」。しかし、それは結果論だ。その当時、DECがミニコンでの成功体験を捨てて、パソコン市場の拡大を予想し、まったく違う設計手法を導き出すことができただろうか?ミニコンの性能を高め、収益率を拡大する方向に向かったのは、当時の経営者としては当然の判断だったはずだ。これこそが、イノベーターのジレンマである。
本の中には、これ以外にも様々な事例が記載されているし、もっと奥深い議論もされている。
顧客指向は間違っているのか?
本書の中で
「顧客の意見に耳を傾けよ」というスローガンがよく使われるが、このアドバイスがいつも正しいとはかぎらないようだ。
という刺激的な言葉が使われている。たしかに、既存の顧客に聞けば「既存技術の費用対性能を向上させて」というのが主流の意見だろう。これを聞いていては破壊的イノベーションは生まれない。しかし、これは顧客を無視するなということではない。存在しないマーケットのことを顧客に聞いても意味がないという教訓に過ぎない。むしろ顧客が何をしたくて、何を悩んでいるのかを見つけてあげることが必要なのだろう。
ベンチャーのように技術指向で話が進むと、その技術が使える市場を見つけるというのは自然の発想だが、これを大企業がやろうとなるとかなり大変なのだろう。本書では、ここら辺が詳しくは語られていないのだが、続編に当たる「イノベーションへの解―利益ある成長に向けて」が刊行されている。どのように破壊的イノベーションを継続するかという処方箋的な内容だそうだ。読んでみたい1冊だ。
逆に顧客としての自分から見ると、以外に身の周りのことなのだなと思ってしまった。確かに「なんか、この機能いらないから、安くならないかなぁ」と思っていて、そんな製品が出るよ、真っ先に買ってしまう。これこそが、破壊的イノベーションなのだろう。デジカメなんかそうだろう。銀塩写真には勝てないといわれながらも、市場を広げた。そして写真付ケータイの出現。この市場も破壊的イノベーションを繰り返しているのだろう。
ちなみに、最近のインタビュー記事(イノベーションのジレンマに陥る優良企業たち)でも、筆者は同じ理論を現状に当てはめている。分かっていても、そうは変われないらしい。顧客としては破壊的イノベーションを望みつつ、エンジニアとしては破壊的イノベーションを恐れながら、見つけようともがくのだ。
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