デザインのデザインは、久しぶりに一気に読みきった本だ。面白い。「デザイン」というものを再認識することができた。引用を多く入れながら、僕なりの考えを書いてみたい。
デザインとは、伝えること
まず、著者の捕らえる「デザイン」とは、非常に根源的なものだ。
デザインとは、ものづくりやコミュニケーションを通じて自分たちの生きる世界をいきいきを認識することであり、優れた認識や発見は、生きて生活を営む人間としての喜びや誇りをもたらしくれるはずだ。
そして、アートとデザイン差をこう表現する。
アートは個人が社会に向き合う個人的な意志表明であって、その発生の根源はとても個的なものだ。だからアーティスト本人にしかその発生の根源を把握することができない。...生み出された表現を解釈する仕方はたくさんある。一方、デザインは基本的には個人の自己表出が動機ではなく、その発端は社会の側にある。社会の多くの人々と共有できる問題を発見し、それを解決していくプロセスにデザインの本質がある。問題の発端を社会の側に置いているのでその計画やプロセスが誰もがそれを理解し、デザイナーと同じ視点でそれを辿ることができる。そのプロセスの中に、人類が共感できる価値観や精神性が生み出され、それを共有する感動が発生するというのがデザインの魅力なのだ。
僕なりの解釈で言えば、デザインとは「みんなになにかを伝える」ことだ。そして、伝えたことを「みんなが理解する」ということが、送り手、受け手の双方にとって快感なのだ。
伝えるべきは情報
その伝えるべき何かとは「情報」である。その情報を相手に伝えるということは、どうにかして相手の中に、その情報を映し出させることだ。コピーと言ってもいいかもしれない。それを著者は、情報の建築と表現する。
デザイナーは受け手の脳の中に情報の建築を行っているのだ。その建築は何でできているのかと言うと、様々な感覚のチャンネルから入ってくる刺激でできている。視覚、触覚、聴覚、嗅覚、味覚、さらにそれらの複合によってもたらされる刺激が受けての脳の中で組み上げられ、僕らが「イメージ」と呼ぶものがそこに出現するのだ。
また、情報に対して、デザイナーがやるべきこととは、
デザイナーが関与する以上、情報は「製品」であるはずだ。製品であるとするならば、電気かみそりに品質があるように情報にも品質があるはずだ。この「情報の質」を高めることでコミュニケーションに効率が生まれ感動が発生する。この「情報の質」をコントロールすることで、そこに「力」が生まれるのではないか。... ある情報が世の中に知れ渡ったり、ある場所に人が大勢集まったり、ある情報は人の心を強く揺り動かしたり、ある商品がたくさん売れたりすることの背景にはこの力が働いているはずだ。
と述べている。デザイナの仕事の目標は、みんなの理解を促進させ、そこに感情の起伏を起こさせることなのだろう。「情報の質」というよりも「情報の伝え方の質」と言ったほうが正しいかもしれない。そこに感動が生まれるからこそ、より強い衝動となってイメージが生まれる。マーケティングにデザインが必要だと言われるのも、まさにこの部分だ。
筆者は、この後、「情報の質」を「情報の美」という言葉に置き換えている。そして、「分かりやすさ」「独創性」「笑い」が、美を形成するの3つの要素だ。笑いが入っているのは、笑いが深い理解の下に行われる行為だからだ。理解できない笑いは面白くない。
今のITにデザインはない
しかし、IT全盛の現状を考えると、この話には皮肉を感じざるをない。ITとは、インフォメーションテクノロジーのことであり、まさに情報を扱っているはずなのだ。しかし、それを伝えると言うことについて、あまりに貧弱だと言わざるを得ない。今のディスプレイ、キーボード、マウスというデバイスは、人間の五感を制限し、どうしてもコミュニケーション不足を引き起こしてしまうのだろう。著者も、
テクノロジーに愚痴をこぼす人は、時代錯誤だと思われてしまうだろう。社会は時代についてゆけない人々をリストラすることに容赦ない。 テクノロジーはもっとゆっくり、じっくりと進化すべきであった。...既にテクノロジーは、ひとりの人間の知識がその総体を把握できる絶対量を超えて増殖し、その果てはかすんで見えなくなってしまった。そういう状況に対処していく思想や教育が間に合わないまま、いたずらにはびこるだけのものづくりやコミュニケーションは美しくない。
と評する。
自分に振り返ってみると、ここで言われている「デザイン」という言葉に強い共感を覚える。僕は、なにかを人に伝えて理解してもらうことに快感を感じるし、何かの表現をとらえて、自分なりに解釈し理解すると言う行為も好きだ。こういったコミュニケーションデザインこそ、自分がやりたいことなのだと感じだ。
その場合、テクノロジーは、どんな役割を果たしているのだろうか。たぶん、デザインをより加速し、理解を助けるものになるべきなのだろう。ここから派生して、いろいろな考えが浮かぶが、それはおいおいエントリしていくことにする。
ともかく、この本は、「デザインを分かりたい」という方はもちろん、「ITは正しいのか」とか「コミュニケーションとはなにか」というようなことに疑問を持つ方まで幅広くオススメである。自分の仕事の中に、デザインは必ず潜んでいる。
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デザインのデザイン 原 研哉 |

